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耳鼻咽喉科・頭頸部外科レジデントマニュアル

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本書は、耳鼻咽喉科疾患の検査法、診断、治療について、安全に医療を行う上で必要な知識を実践的にまとめたレジデントマニュアルシリーズの1冊。耳鼻咽喉科専門医を目指す後期研修医、耳鼻咽喉科医を主たる読者とし、耳鼻咽喉科専門医にとって必要かつ臨床にすぐに役立つ知識をわかりやすく解説。また実際の診療の流れに即した実践的な構成で、耳鼻咽喉科新専門研修プログラムにも対応した内容となっている。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
監修 伊藤 壽一 / 大森 孝一
編集 楯谷 一郎
発行 2016年11月判型:B6変頁:432
ISBN 978-4-260-02526-3
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

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 京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科では,約15年前から毎年4~5月の平日朝(7時半~8時半)に「耳鼻咽喉科・頭頸部外科モーニングレクチャー」を行っている.本レクチャーの趣旨は「一般的な耳鼻咽喉科・頭頸部外科の教科書的な知識だけでなく,実地臨床の現場で役に立つ知識・手技などを集中的に講義すること」である.本レクチャーのサブタイトルに「耳鼻咽喉科・頭頸部外科疾患の検査・治療法を中心に,実践的に講義」「めまい,鼻出血などの救急対応を具体的に説明」などを掲げている.耳鼻咽喉科医師が臨床の現場で実際に行うべき手技,検査法,また耳鼻咽喉科医師以外でも日常臨床や救急の現場で遭遇する耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の救急疾患とその対応法を周知する意図から,このようなサブタイトルをつけている.
 本モーニングレクチャーは毎朝2か月近くに及ぶがそれでも十分といえず,朝の時間帯に参加しにくい医学生やメディカルスタッフのためにも,モーニングレクチャーが終了する6月ごろから毎週1日,夕方に「耳鼻咽喉科・頭頸部外科イブニングレクチャー」を行っている.本レクチャーのサブタイトルは「耳鼻咽喉科・頭頸部外科手術と周術期の看護・管理」である.受講対象はレジデント・医学生だけでなく,メディカルスタッフも念頭に置いたものである.本イブニングレクチャーは3か月近くに及ぶ.
 このようなレクチャーを行う以前は,レジデントなどに対する講義は臨床の現場で,そのつど散発的に行われてきた.しかし,習得すべき手技などが格段に増え,若い医師に少しでも早く実地臨床現場に慣れてもらうべく,このような集中講義を開始した.対象となるのは,基本的には耳鼻咽喉科・頭頸部外科のレジデントであるが,朝の始業前・授業前の時間帯,夕方の時間帯であるため,看護師などのメディカルスタッフも参加可能であり,臨床実習中の医学生だけでなく低学年の医学生も参加している.講義で使用する資料は,当初は各講師が各自で印刷して講義のたびに配布していたが,講師も異動などで変更になることがあり,またスタンダードなマニュアルを作る必要があったので「京大耳鼻科レジデントマニュアル」を作成し,モーニングセミナー,イブニングセミナーの資料として参加者に配布している.これが本書の元になるマニュアルである.
 上記のマニュアルは耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の基本的な手技,検査法などは記述していたが,足りない部分は実際の講義の中で補足していた.本書では,これまで当科が作成してきたマニュアルで記述しきれなかった習得すべき知識・手技などの項目をさらに補足し,医学生にも利用しやすいように,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の基本的な知識も網羅した.また本書は耳鼻咽喉科専門医取得のための知識の再確認の意義ももつ.
 しかし本書の趣旨は実地臨床を念頭に置いたものであり,一般の耳鼻咽喉科・頭頸部外科の教科書とは一線を画す.そのため記述はできるだけ箇条書き様式を取り入れ,フローチャートなども随時挿入した.耳鼻咽喉科・頭頸部外科の臨床現場に出る前に本書を通読すると,現場での診療・検査・処置・手術の事前のシミュレーションが可能となる.なお本書の「臨床現場で役立つ」との趣旨のため,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域における基礎的・研究分野の記述は最小限にとどめた.
 若い医師が耳鼻咽喉科・頭頸部外科の臨床現場に出たときに少しでも自信をもって診療に向き合えるべく,また医学生にも実地臨床の内容を理解してもらうべく本書を活用していただければ幸いである.
 末筆ではあるが,本書を編集するにあたり多大なご努力をいただいた医学書院の担当の方々に深謝申し上げる.

 2016年10月
 伊藤壽一
 大森孝一

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第1章 所見のとり方
  1 耳
  2 鼻
  3 口腔
  4 咽頭・喉頭
  5 頸部

第2章 主訴からみた診療の流れ
  1 耳痛・耳漏・耳鳴・耳閉感・難聴
  2 めまい・平衡障害
  3 鼻漏・鼻閉・鼻痛
  4 嗅覚障害
  5 味覚障害
  6 口内痛
  7 咽頭痛
  8 咽喉頭異常感
  9 嚥下障害
  10 発声障害
  11 言語障害
  12 呼吸困難(上気道狭窄)
  13 鼻腔・口腔・咽喉頭の腫瘤
  14 頸部腫脹
  15 甲状腺腫脹
  16 外耳道異物・鼻腔異物・咽頭異物

第3章 耳
 A.検査法
  1 聴覚検査・耳管機能検査
  2 平衡機能検査
 B.疾患
  1 突発性難聴
  2 感音難聴
  3 急性中耳炎・急性外耳炎
  4 滲出性中耳炎
  5 慢性中耳炎
  6 真珠腫性中耳炎
  7 耳硬化症・中耳奇形
  8 顔面神経麻痺
  9 メニエール病
  10 良性発作性頭位めまい症(BPPV)
  11 前庭神経炎
  12 聴神経腫瘍
  13 聴器・側頭骨の外傷
 C.代表的な術式と周術期管理
  1 めまいに対する外科的治療
  2 顔面神経減荷術
  3 鼓膜形成術
  4 鼓室形成術
  5 アブミ骨手術
  6 人工内耳手術
    [コラム] 人工内耳の仕組みと言語聴覚訓練
    [コラム] 難聴治療における新しい人工聴覚器
  7 聴神経腫瘍手術

第4章 鼻副鼻腔
 A.検査法
  1 アレルギー検査
  2 鼻腔通気度検査
  3 嗅覚検査
 B.疾患
  1 鼻出血
  2 アレルギー性鼻炎
  3 嗅覚障害
  4 急性副鼻腔炎
  5 慢性副鼻腔炎
  6 鼻副鼻腔腫瘍(良性腫瘍)
  7 顔面外傷
 C.代表的な術式と周術期管理
  1 内視鏡下鼻副鼻腔手術
  2 鼻中隔矯正術
  3 粘膜下下鼻甲介骨切除術
  4 後鼻神経切断術
  5 鼻骨骨折整復術・眼窩壁骨折整復術

第5章 口腔・咽頭
 A.検査法
  1 嚥下内視鏡検査・嚥下造影検査
  2 睡眠時呼吸検査
 B.疾患
  1 上気道炎
  2 急性扁桃炎・伝染性単核球症
  3 扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍
  4 扁桃病巣感染
  5 睡眠呼吸障害
 C.代表的な術式と周術期管理
  1 口蓋扁桃摘出術・アデノイド切除術
  2 嚥下障害に対する外科的治療

第6章 喉頭
 A.検査法
  1 喉頭内視鏡検査・喉頭ストロボスコープ検査
    [コラム] 頭頸部癌診療におけるnarrow band imaging
  2 音声機能検査
  3 音響分析検査法・聴覚心理的評価法・自覚的評価法
 B.疾患
  1 声帯良性病変
    [コラム] 音声治療(音声リハビリテーション)
  2 声帯麻痺
  3 喉頭軟弱症
  4 痙攣性発声障害
  5 喉頭良性腫瘍・腫瘤
  6 急性喉頭蓋炎
  7 咽喉頭逆流症
 C.代表的な術式と周術期管理
  1 局所麻酔下喉頭手術
  2 喉頭微細手術
  3 甲状軟骨形成術
  4 披裂軟骨内転術
  5 気管切開術・緊急気道確保

第7章 頭頸部
 A.検査法
  1 生検
  2 穿刺吸引細胞診
  3 頭頸部領域の超音波検査
    [コラム] 頭頸部癌診療におけるFDG-PET/CT
 B.疾患
  1 頸部の炎症性・感染性疾患
  2 頸部の先天性疾患
  3 頸部の良性腫瘍
  4 口腔癌
  5 上咽頭癌
  6 中咽頭癌
  7 下咽頭癌
  8 喉頭癌
  9 鼻・副鼻腔癌
  10 聴器癌
  11 原発不明癌頸部リンパ節転移
  12 甲状腺癌
  13 良性結節性甲状腺腫
  14 バセドウ病
  15 慢性甲状腺炎(橋本病)
  16 副甲状腺機能亢進症
  17 唾液腺腫瘍
 C.代表的な術式と周術期管理
  1 頸部リンパ節生検
  2 頸部郭清術
  3 甲状腺・副甲状腺手術
  4 耳下腺手術
  5 顎下腺手術
  6 舌部分切除術
  7 喉頭全摘術
    [コラム] 咽喉頭症に対する経口的鏡視下手術
  8 再建手術(遊離皮弁・有茎皮弁)
  9 頭蓋底手術
 D.全身管理
  1 放射線療法と全身管理
  2 頭頸部癌化学療法と管理
  3 頭頸部支持療法
  4 緩和医療

第8章 耳鼻咽喉科と感染症
  1 耳鼻咽喉科の感染症と抗菌薬の使い方
  2 周術期感染予防と術後感染症への対処
    [コラム] 妊婦へ処方する際の注意点

付録
  1 頭頸部癌,甲状腺癌のTNM分類
  2 耳鼻咽喉科専門研修プログラム
  3 主なガイドライン・指針など

索引

Memo
めまい,平衡障害の特徴的症状
アフタ,びらん,潰瘍
メニエール病と有酸素運動
NF2患者の聴覚補償
鼓室形成術に用いる用語
気道管理のガイドライン
カニューレの種類
バセドウ病と妊娠
慢性甲状腺炎と妊娠
顎下部郭清時の顔面神経下顎縁枝の取り扱い

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臨床に即した耳鼻咽喉科診療の流れをコンパクトに整理した1冊
書評者: 香取 幸夫 (東北大教授・耳鼻咽喉・頭頸部外科学)
 耳鼻咽喉科の学会において京都大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科の先生方の発表を拝聴して常に羨望することの1つに,各症例の治療経過の記録が適切に要約されていることが挙げられる。耳疾患から頭頸部腫瘍に及ぶいずれの領域においても,病歴,初診時所見,診断,保存的治療,手術といった一連の流れがとてもよく整理されているのである。その教室で行っている臨床指導(モーニングセミナー,イブニングセミナー)を凝集した本書を一読させていただき,なるほどこのようなセミナーを定期的に行い研修医や学生,メディカルスタッフをご指導されているのか,と感銘に及んでいる。

 内容に少し触れてみたい。本書は全8章と付録から構成され,最初の2章は診察の総論である。第1章は「所見のとり方」で,耳,鼻,口腔,咽頭・喉頭,頸部の診察について簡明かつ十分に要約されており,学生のOSCEから専門医の一般診療のレベルまで対応できる内容である。第2章は「主訴からみた診察の流れ」で,ここでは耳症状,めまい・平衡障害,鼻症状,頸部腫脹といった16項目の訴えに対して,「まずやるべきこと」「診療の流れ」「想定される主な疾患」が順に整理されている。耳鼻咽喉科・頭頸部外科で扱う疾病の症状が遺漏なく順に述べられており,新患外来や救急で診察を進める上でとても参考になる内容である。

 第3~7章は,耳,鼻副鼻腔,口腔・咽頭,喉頭,頭頸部の順に,「検査法」「疾患」「代表的な術式と周術期管理」がそれぞれ述べられている。コンパクトな体裁であるにもかかわらず,どの項目にも代表的な内視鏡,CT,MRIの画像所見やスキーム,図表が視認性よく挿入されていてわかりやすい。各々の章で検査,疾患,手術の項目が独立していることで,実際の診療の予習や確認に用いる際に探しやすいと感じる。第8章は,耳鼻咽喉科の治療のうち大きな比率を占める感染症に対する治療を独立して扱っている。特に抗菌薬の選択や投与法について実践的な記載が多い。最後の18ページは付録に費やされており,頭頸部癌,甲状腺癌のTNM分類や各疾患に対するガイドライン・指針に加え,耳鼻咽喉科専門研修プログラムが紹介されている。耳鼻咽喉科・頭頸部外科のキャリアパスを提示し,重要であるが専攻医が減少傾向にあるこの領域に,多くの学生や初期臨床研修医を招こうとする意欲的な記載である。

 全体を通して,本書は診療の予習に,また診療中に迷ったときにまず頼りになるコンパクトな教科書であり,自室や家で通読することでも効果的な勉強ができる1冊である。医師国家試験をはじめとする資格試験の対策にも有用と思う。京都大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科の学生・スタッフ教育のエッセンスが集約された素晴らしい書であり,これから臨床に望む多くの学生やレジデントに薦めたい。
機能的かつ実践的なマニュアル
書評者: 村上 信五 (名市大教授・耳鼻咽喉・頭頸部外科学)
 本書は京大耳鼻咽喉科・頭頸部外科で,15年前から教室員や医学生,看護師などのメディカルスタッフを対象に行ってきたモーニングレクチャーやイブニングレクチャーの資料を基に作成されたものである。

 “何事もまずは形から入る”とはよく言ったものである。本書はコンパクト! 縦18cm×横11cmで,iPhone Plusよりは大きいがiPad Miniよりは小さい。白衣のポケットにも収まり,片手でページをめくることができる。厚さはiPadの2倍あるが,重さは14g軽く,ジャスト300gである。光沢のある上質紙を使用しており,400ページ超ものコンテンツが収まっている。一目見ただけで,手に取って中身をのぞきたくなる。

 本書作成の趣旨が「臨床現場で役立つ」であることからして,いわゆる教科書とは一線を画した機能的かつ実践的なマニュアルになっている。まず,表紙裏の見返し部分に各章の大項目が記載され,めくりの部分に連結しているため,必要な目次を探しやすい。構成としては,第1章「所見のとり方」では,耳,鼻,口腔,咽頭・喉頭,頸部の基本的な診察方法とチェックポイントがシェーマと写真を用いて簡潔に記載されている。また第2章「主訴からみた診療の流れ」では,耳鼻咽喉科・頭頸部外科疾患の主たる臨床症状を取り上げ,問診,視診,触診,検査(血液,生理,機能,画像)など「まずやるべきこと」をリストアップしている。そして,「診療の流れ」として診察・検査の手順をフローチャートで示し,最後に「想定される主な疾患」として鑑別すべき疾患を挙げている。まさに,患者が受診して診察を受け,診断がなされていく日常診療の過程が機能的かつ実践的に実施できるシステムになっている。

 そして第3~7章では,耳,鼻副鼻腔,口腔・咽頭,喉頭,頭頸部領域の疾患において,行うべき諸検査の具体的な実施手技と所見の読み方について解説し,診断のポイントと治療方針が詳細に記載されている。加えて各領域における代表的手術の術式や周術期の管理も簡潔にまとめられているが,特に頭頸部癌では腫瘍摘出後の再建や放射線治療,化学療法の実際と全身管理,緩和医療に至るまで詳細な解説がなされている。患者を問診し,所見を取り,検査を通して診断し,治療を行うという一連の診療が,無駄なくシステマティックに行えるのが本書の特徴と言える。

 さらに第8章「耳鼻咽喉科と感染症」では,耳鼻咽喉科領域の感染症に対する主たる原因菌と抗菌薬の選択,周術期・術後の感染予防・対策を取り上げ,妊婦に対する薬剤処方の注意点についてもコラムで解説している。

 そして末尾の付録では,(1)頭頸部癌,甲状腺癌のTNM分類,(2)耳鼻咽喉科専門研修プログラム,(3)各疾患のガイドライン・治療指針の検索リストが掲載されている。また,本書全体を通して要所でMemoや参考図書が記載されているので,さらに深く詳細を調べたいときに役立つ。

 以上のように,本書には耳鼻咽喉科の全領域において,耳鼻咽喉科専門医に必要な知識と診療の必須事項がコンパクトに収載されている。まさに「臨床現場で役立つ」書であり,医学生や研修医はもちろん,耳鼻咽喉科専門医をめざす専攻医にとって必携の書と言える。

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