FAQ ベンゾジアゼピン系薬剤を悪者にしないための使い方(宮内倫也)
寄稿
2016.10.31
【FAQ】
患者や医療者のFAQ(Frequently Asked Questions;頻繁に尋ねられる質問)に,その領域のエキスパートが答えます。
今回のテーマ
ベンゾジアゼピン系薬剤を悪者にしないための使い方
【今回の回答者】宮内 倫也(名古屋大学大学院 精神医学専攻)
ゾピクロン(アモバン®)とエチゾラム(デパス®)がようやく向精神薬に指定された今,ベンゾジアゼピン系薬剤(以下,BZDs)の使用を再考すべきです。BZDsは使い方が悪いとQOLを悪化させ,また依存や離脱症状を来し,医師-患者間のみならず社会的な問題にもなります。今回はそんなBZDsの“適正使用”について考えてみましょう。
ちなみにゾルピデム(マイスリー®)やゾピクロンなどはBZDs特有の化学構造を有していないためnon-BZDsと呼ばれますが,作用部位や効果,副作用が同一なため,今回はそれも含めBZDsとします。そのほうが合理的であり,“non-BZDs”としてことさらBZDsとの差異化を図ることは,誤解を招くことにもつながりかねません。
■FAQ1
BZDsのメリットやデメリットは何ですか?
BZDsはGABAA受容体にあるベンゾジアゼピン結合部位に働き,効果を発揮します。各BZDsの作用はGABAA受容体を構成するαサブユニットの種類によって異なるとされ,例えばα2サブユニットを含む受容体に好んで働くBZDsは主に抗不安作用や筋弛緩作用を持ちます。抗けいれん作用を持つものもありますが,多くの医師が期待するのは抗不安や催眠の作用でしょう。BZDsは筋弛緩作用や鎮静作用,抗不安作用などを有し,作用の強弱,さらに半減期の違いによって個々の薬剤の“顔つき”が浮かび上がります。それらの特徴が,そのまま「メリットにもデメリットにもなる」と,大まかに(あくまでも大まかに)考えておきましょう(図)。
| 図 メリットとデメリットは裏返し |
その他のデメリットとしては“脱抑制”があり,服用すると攻撃的・衝動的になります。そのハイリスク要因は,アルコールの同時摂取,大量服用,変性疾患の存在,もともとの衝動性傾向が強い患者などです。また,睡眠中の奇異行動(起き出してご飯やお菓子を食べる,車を運転するなど。しかも本人はそれを覚えていない!)といった症状も認められます。身体・精神の両面で依存を形成することは周知の事実で,減量・中止の際に離脱症状もあり,ここがBZDsの泣きどころ。例えばジアゼパム(セルシン®,ホリゾン®)では,依存は毎日服用していると1か月ほどで形成されることがあり,8か月では半数近くの患者さんにもたらされると言われています1)。最近の報告では認知症との関連は否定的であることから2),そこを強調する必要性は低くなっているかもしれません。
CYP阻害はほぼないものの,ほとんどのBZDsはCYP3A4で代謝されることから,その酵素を阻害する薬剤によって作用が増強され,酵素を誘導する薬剤によって作用が減弱される点には注意が必要です。また,BZDsは血中蛋白結合率が高いことから,多剤併用時には他の薬剤の効果を読みにくくしたり,血中蛋白の乏しい高齢者では常用量でも強い作用をもたらしたりすることがあります。
Answer…各BZDsの持つ種々の作用や半減期の長短が,メリットにもデメリットにもなります。他には脱抑制や睡眠中の奇異行動,依存,離脱症状などが挙げられ,CYP3A4に作用する薬剤との相互作用や血中蛋白結合率の高さにも注意を要します。
■FAQ2
離脱症状にはどのようなものがありますか? また,離脱症状に気付くポイントは何ですか?
離脱症状は非常に多彩です。不安,イライラ感,不眠,インフルエンザ様症状,振戦,種々の知覚異常,集中力低下などなど……,他にもあまたの症状が出現し,少数ながらけいれん発作や幻覚,妄想なども認めます。まさに“何でもアリ”で,原疾患の症状とも区別しづらいのです。大事なのは,BZDsの減量・中止から比較的速やか(多くは1~2週以内)に何らかの症状が出現...
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