第46回IDATENインタラクティブケースカンファレンス開催
2016.10.03
その抗菌薬処方から見直そう
第46回IDATENインタラクティブケースカンファレンス開催
世界的に増加の一途をたどる薬剤耐性菌。問題となっている背景の一つに,抗菌薬の不適切な投与がある。日々,院内や外来での診療に携わる医療者は,この問題にどう取り組めばよいか。
日本における臨床感染症診療と教育の普及・確立・ 発展を目的に活動する日本感染症教育研究会(IDATEN/代表世話人=奈良医大・笠原敬氏)が9月3日,第46回IDATENインタラクティブケースカンファレンスを東京都内で開催した。本紙では,特別講演と,抗菌薬選択のプロセスや多職種連携による感染対策について議論されたケースカンファレンスの模様を報告する。
特別講演には,今年4月発表の「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」の策定に有識者として携わった具芳明氏(東北大病院)が登壇し,薬剤耐性菌問題の現状を報告した。薬剤耐性菌は発展途上国を中心に増えているが,日本も例外ではない。耐性菌を広げないための手段として,医療者には抗菌薬の適正使用が求められると訴えた。
日本の抗菌薬使用状況はどうか。「使用総量は欧州諸国と比べて多くはないものの,より新しい広域抗菌薬が多く処方される傾向があり,特に外来では,小児への処方機会が多い」と指摘した氏は,院内処方と外来処方,二つの側面から適正使用の方策を提示した。まず,院内処方では,短期間の効果にとどまりがちな抗菌薬使用の届け出制や許可制よりも,抗菌薬使用に対する前向きな監査とフィードバックが有効と,米国ICUの事例(Crit Care Med. 2013[PMID:23873275])から解説した。
上気道炎患者の60%に抗菌薬が処方されているとの結果(Intern Med. 2009[PMID:19687581])が出ている日本の外来診療の現場では,グラム染色をきちんと行い診断をつけることが重要になると主張。グラム染色の実施が難しい施設に向けた,抗菌薬処方のガイドラインも必要だと提言した。
「アクションプラン」に示された,抗菌薬使用量を2020年までに3分の2に減らすなどの成果指標を「意欲的な数字」と評価した氏は,「抗菌薬の適正使用は,将来に向けて医療者が取り組むべき重要課題。小さな積み重ねが,将来の結果につながる」と述べ,抗菌薬適正使用への行動を促した。
グラム染色で適切な治療選択を
続いて,感染症コンサルタントの岸田直樹氏をファシリテーターに,「成人症例」「多職種連携」「小児診療」の3つの観点から症例検討が行われた。
ESBL産生菌に治療効果を示した知見が多いとされるのはカルバペネム系抗菌薬だが,ESBL産生菌による尿路感染症に,より適切な抗菌薬の選択について検討したのは片浪雄一氏(国立国際医療研究センター病院)。ESBL産生腸内細菌科細菌による腎孟腎炎にはセフェム系のセフメタゾールが有効で,菌血症症例もなかったとの報告(Int J Infect Dis. 2013[PMID:23140947])や,臨床的に安定していればセフメタゾールを安全に使用できるとの結果(BMC Infect Dis. 2016[PMID:27538488])を列挙し,ESBL産生菌に対してはセフメタゾ...
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