MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2016.04.18
Medical Library 書評・新刊案内
平井 康夫 総編集
矢納 研二,則松 良明 編
《評 者》長村 義之(国際医療福祉大病理診断センター長/国際細胞学会(IAC)次期理事長/日本臨床細胞学会(JSCC)元理事長)
即時に応用可能なアトラス
子宮内膜細胞診を臨床検査として日常的に実施しているのは,国際的にもわが国だけであり,日本での細胞診従事者は,この分野で世界のリーダーとして位置付けられてきた。
本書は,日本臨床細胞学会で作成した全身26領域の「細胞診」の中で,婦人科・泌尿器の「記述式内膜細胞診報告様式」にのっとって,これまでに蓄積された知見を網羅して作成され,「背景」「定義」「診断基準」を明記したアトラスとなっている。「診断基準」はわれわれが慣れ親しんでいる子宮頸部細胞診報告様式(ベセスダシステム)の判定基準と同様に活用できるよう工夫されており,使いやすい。また,直接塗抹法のみならず液状化検体細胞診(LBC)にも言及されており,いずれの施設においても即時に応用が可能である。内膜細胞診におけるLBCの利点も強調されている。
記述式内膜細胞診報告は,(1)陰性/悪性ではない,(2)内膜異型細胞(ATEC),(3)子宮内膜増殖症,(4)子宮内膜異型増殖症,(5)悪性腫瘍とに整理して分類されている。写真は,細胞診が主たる画像であるが,適宜病理組織画像も貼付され,理解が深まるように工夫されている。写真は美麗であり,その説明も的確と言える。
従来の3段階分類(陰性・偽陽性・陽性)において,「偽陽性」とされていたものに関して,記述式内膜細胞診報告様式では,「ATEC」の判定領域を用いることにより,組織診断との整合性や,臨床医に向けて経過観察や組織診の対応が明らかにされると考えられる。
本書では,わが国で盛んに行われている内膜細胞診に熟達した著者により,ATEC,ATEC-US,ATEC-Aなどのカテゴリーも,適切な図を使用してわかりやすく解説されている。ATECの判定基準について,特に判定に苦慮するもの(ホルモンによる変化,増殖性病変)に関しては,多くの写真を用いて解説してあり,さまざまなパターンを視覚的に捉えることができ,実際の現場においても大いに活用されると考える。また,今後多くの現場で導入されるであろうLBC法による写真も数多く掲載されており,標本の種類(作製法)による細胞の差異にも対応できると考えられる。
全体を通して,非常に読みやすい構成となっているので,一度通読し,その後実際の症例に遭遇した際に本書を活用することが勧められる。
本書が,臨床検査技師の方々および細胞病理医の方々の座右の書として,日常の診療において役立つことを大いに期待している。
B5・頁176 定価:本体10,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02409-9


桝田 出 著
《評 者》市川 和子(川崎医大病院栄養部部長)
管理栄養士にも役立つ一冊
ここ数年,DPP-4阻害薬やSGLT-2阻害薬といったこれまでとは異なる作用機序の糖尿病治療薬の登場により,さまざまな角度から血糖コントロールへの挑戦が始まっています。しかし,治療薬の種類の多さには,頭を悩ませます。特に評者ら管理栄養士が困っているのは,多剤併用をされている患者です。どうしてこんなに何種類もの服薬が必要になるのかと疑問に思いますが,あまり強くない薬を少量ずつ服用することで副作用を最小限に抑えようとしていることも理解できます。
経口薬は効能の他に副作用がいくつかあります。例えば,腎機能の状態により服薬に条件が付きます。特に腎排泄型の糖尿病治療薬は,腎機能低下とともに体内に蓄積され,思いがけず低血糖状態を招いてしまうことがあります。糖尿病患者では,肝機能障害や脂質異常症,高血圧・心血管疾患などを合併していることも多く,妊娠糖尿病やステロイド糖尿病など病態もさまざまです。また高齢者では,加齢に伴う臓器の機能低下も考慮する必要があり,服薬時の注意点は多岐にわたります。
評者の場合,特にステロイド服薬時の血糖コントロールは重要と考えています。ステロイドはさまざまな疾患に用いられ治療効果も高く,効能が期待されています。しかし,一方では食後高血糖をはじめ脂質異常症,血圧上昇,易感染状態,食欲増進といった副作用にも注意しないといけません。さらに,糖尿病患者は神経障害も起こしやすく,便秘と下痢を繰り返す患者も少なくありません。特に高齢者では,注意が必要となります。脱水は急性腎不全や脳・心血管疾患のリスクとなりますので,コメディカルスタッフも十分認識すべきことと考えます。本書は,このようなさまざまな状況下にある糖尿病患者の血糖調整法や服薬時の注意点などが大変読みやすく整理され,評者が常日頃意識している内容が十分網羅されています。
最近ではこの本を栄養指導室に置いています。栄養指導を行う際にも薬の知識は必須となりますので,食事と薬の関係について本書で確認しながら栄養指導に役立てています。わかりやすく記されているので他の管理栄養士からも好評のようです。本のサイズがもう少しコンパクトであれば,糖尿病カンファレンスや回診時にもポケットに入れて携帯することも可能と考えます。
A5・頁176 定価:本体1,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02160-9


日本口腔・咽頭科学会 監修
《評 者》宇佐美 真一(信州大教授・耳鼻咽喉科学)
口腔咽頭領域の診断・治療を最新の情報にアップデート
耳鼻咽喉科はカバーする領域が広く,多くのサブスペシャルティ領域から成り立っているのが特徴である。中でも口腔咽頭領域は,耳鼻咽喉科の重要なサブスペシャルティ領域の一つとしてこれまで発展を遂げてきた。口腔咽頭領域の疾患の多くは直接明視できることから,視診がまず診察の第一歩として重要である。日本口腔・咽頭科学会が監修している本書は,1998年の初版発行の際からイラスト,カラー写真をふんだんに使用し,われわれ耳鼻咽喉科医が口腔咽頭領域の診察をする上で重要な情報を提供してくれる書として好評を博してきた。
この領域は味覚,摂食,嚥下,構音といった生活の質(QOL)を左右する重要な機能を扱っており,われわれ耳鼻咽喉科医にとってこの領域の疾患を正しく診断し,適切な治療をしていくことは重要な責務の一つである。またこの領域は,免疫...
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