医学界新聞

2015.12.21



Medical Library 書評・新刊案内


完全腹腔鏡下胃切除術
エキスパートに学ぶ体腔内再建法[DVD付]

永井 英司 編

《評 者》黒川 良望(四谷メディカルキューブ理事長/院長)

再建手技の極意を知ることができる貴重な手引き書

完全腹腔鏡下胃切除術の体腔内再建法を詳解した胃外科医必携のバイブル
 1991年に世界に先駆けてわが国で開発された胃がんに対する腹腔鏡下手術は,低侵襲手術術式として定着し,今まさに発展期を迎えている。腹腔鏡下胃切除術は,デバイスの進歩と手技の定型化により,若手外科医にも広く施行されるようになってきているが,複雑な再建方法や層を意識したリンパ節郭清など,他の腹腔鏡下手術と比べると決してやさしい手術ではない。胃切除は腹腔鏡下に行い,再建は小開腹下に開腹手術と同様の手技で行っている医師も依然として多いのが実情である。

 この本は,この領域のエキスパートたちによって共同執筆された,「完全腹腔鏡下胃切除術」,その中でも「体腔内再建法」に焦点を絞った単行書である。

エキスパートたちの再建手技の極意をまとめた貴重な手引き書
 この本を手にする者は,腹腔鏡下胃切除術に対してある程度の経験があり,より安全で確実な再建方法を模索している,一定レベル以上の外科医が大半であろう。胃切除後の再建方法は切除範囲により異なり,完全手縫い法,リニアステイプラーを用いた再建法,サーキュラーステイプラーを用いた吻合法など多くの種類があるが,この本には根治性と術後QOLの向上をめざし,無駄を省き細部にこだわり抜いたエキスパートたちの再建手技の極意が余すところなくまとめられており,実際の手術の際に直ちに役立つ,貴重な手引き書となっている。

付録DVDに全ての術式が動画として収載
 本書は『臨床外科』誌に26回にわたり連載され好評であった「必見! 完全体腔内再建の極意」をまとめたものだが,連載時には明確にはイメージできなかった実際の器具や臓器の取り回しが付録DVD動画で確認できるのはありがたい。全ての術式が収載されており,実際の手術直前に当該術式だけを抜き出して閲覧すれば術前のイメージトレーニングとして大いに役立つだろう。

 本書を座右に置き,エキスパートたちの手技を参考にしながら,いかなる事態にも対処できるように技術を磨き,安全で確実な体腔内再建方法を身につけていただきたいと念願している。

B5・頁216 定価:本体12,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02103-6


医療政策集中講義
医療を動かす戦略と実践

東京大学公共政策大学院 医療政策教育・研究ユニット 編

《評 者》高山 義浩(沖縄県立中部病院感染症内科)

2025年を見据えた先駆的かつ実践的な医療改革のテキスト

 2014年6月,「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(医療介護総合確保法)」が成立し,より効率的で質の高い医療提供体制をめざした地域医療を再構築し,地域包括ケアシステムとの連携を深めるための方針が定められた。

 改革が急がれる背景には,日本が縮減社会に入ってきていることがある。これから毎年,日本から小さな県一個分の人口が消滅していく。その一方で,高齢化率は30%を超えようとしており,団塊の世代が75歳以上となる2025年には,国民の3人に1人が65歳以上,5人に1人が75歳以上となる。疾患を有する高齢者が増加することになり,医療と介護の需要が急速に増大する見通しとなっている。

 これが,いわゆる「2025年問題」であるが,現行の医療と介護の提供体制のみでは対応できない可能性があり,今から地域単位での改革を進めておく必要がある。急性期医療から回復期,慢性期,さらに在宅医療・介護まで,一連のケアが切...

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