医学界新聞

寄稿

2015.11.30



【視点】

摂食嚥下関連医療資源マップで連携の輪を広げる

戸原 玄(東京医科歯科大学大学院准教授・高齢者歯科学)


 高齢者の摂食嚥下・栄養は近年注目される分野であり,今,その支援体制の整備が喫緊の課題となっている。高齢者の摂食嚥下の問題,つまり「食べること」の支援は,高齢化が進む本邦においては専門的な取り組みを行う病院だけが担うようなものではない。地域に存在する医療・介護資源が連携し,一体となって取り組んでいく必要がある。しかし現状では,それらの資源が有効につながっているとは言いがたい。その理由の多くは,在宅や介護施設の現場で摂食嚥下のリハビリを受けることができることすら知られていない,または知っていたとしても近隣ではどこに依頼を出したらよいのかがわからないといったことにある。

 こうした背景を踏まえ,2014年度に厚労省で「高齢者の摂食嚥下・栄養に関する地域包括的ケアについての研究」1)が発足し,活動を行った。同研究班で全国調査を行い,高齢者の摂食嚥下・栄養に関する問題に対応できる医療機関を登録したウェブサイト「摂食嚥下関連医療資源マップ」を作成した2)。医療関係者に限らず介護関係者,患者・家族など誰でも閲覧・検索することができるかたちで,2015年9月10日に公開した。

 本ウェブサイト上に設けたツールの特徴は,医療機関と提供するサービスをリスト化することに留まらず,日本地図上にマッピングしている点と言える。嚥下内視鏡検査,嚥下造影検査,嚥下訓練といった医療・支援提供の可否に加え,訪問診療の可否についても記載し,訪問診療が可能な圏内(各拠点から半径16km以内)を円で囲んで表示する機能を付け,同圏域の資源をひと目でわかるような工夫を施した。摂食嚥下の問題でどこか依頼・紹介先を探す必要が...

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