医療面接は,知識や技術とともに両輪を成すもの(児玉知之)
インタビュー
2015.11.02
【interview】
“医療面接は,知識や技術とともに両輪を成すもの。
臨床で使えるスキルを身につけてほしい”
児玉 知之氏(柏厚生総合病院内科)に聞く
医療面接は卒前教育において身につけるべき項目として位置付けられており,若手医師の中では医療者-患者間のコミュニケーションの重要性が認識されてきている。しかし,その認識は抽象論やスローガンの域にとどまっており,実践には結びついていないことも多い。『戦略としての医療面接術』(医学書院)を執筆した児玉氏に,臨床で使えるスキルとして医療面接術を学ぶことの重要性を聞いた。
――医療面接術に興味を持ったきっかけを教えてください。
児玉 私が研修医だったとき,素晴らしい医療を提供しているにもかかわらず,コミュニケーションの問題で治療の方針や内容を患者さんにうまく伝えられていない上級医がいました。いくら医学的に高度な知識や技術を持っていても,患者さんの理解が得られなければトラブルにつながります。研修医のほうが患者さんと接する機会が多いからこその気付きでしたが,研修医である私から上級医に意見をすることもできず,もったいなさともどかしさを感じていました。そのころから,どうすれば医療面接がうまくできるのかを考えてきたんです。
経験を重ねるだけでは医療面接はうまくならない
――医療面接は医師なら誰でも行うものです。経験を重ねれば自然とうまくなるものではないのでしょうか。
児玉 私もかつてはそのように考えていました。しかし実際には,自ら意識して医療面接を振り返り,学んでいかなければなかなか改善されません。
一見問題なく医療面接が終わった場合でも,患者さんの中には不満がたまり,後々のトラブルの原因になることもあります。私自身,これまでの臨床経験の中で,患者さんに医学的な方針を理解してもらえなくてトラブルになりかけたり,言いたいことが十分に伝わらず不満を持たれたりという事例を何度も経験してきました。
――もし問題があれば,周囲から指摘を受けませんか。
児玉 たとえ患者さんの不利益となるような医療面接をしている医師がいたとしても,他職種から医師に対しては注意しにくいですし,トラブルが起きない限り医師同士でもなかなか指摘できません。研修医の間であれば上級医に注意してもらえることもあるでしょう。しかし,上級医の側も限られた研修期間内では知識や手技を教えるので手一杯で,面接術にまでは手が回らないことが多いものです。
――OSCE導入以降,医療面接の能力を評価されるようになりました。卒前教育だけでは不十分なのでしょうか。
児玉 卒前教育に導入されたことで,私が医学教育を受けたころと比べると,若い世代はコミュニケーションへの意識が高いことを感じます。医療面接に興味を持っていたり,努力の必要性に気付いていたりする段階で,「自分は問題ない」と思っている医師よりもかなりリードしているのは確かです。それでも,研修医に医療面接の注意点について尋ねると,「患者の立場に立って愛護的にふるまう」「傾聴して共感することが大切」という抽象論やスローガンの域を出ないことが多い。
――臨床で使うには,もう一歩進んだ学習が必要なのですね。
児玉 医療は,検査や治療だけでなく,それを実行するための説明などのコミュニケーションがあって成り立ちます。毎日行う医療面接は診療の基本とも言えるのです。医学的知識や技術を最大限に生かすためにも,トラブルを回避するためにも,「臨床で使える」面接術を身につけてほしいと思います。
モデルケースとともに系統立って「型」を学ぼう
――では,どのように面接術を学べばよいのでしょうか。
児玉 まずは医療面接の基本となる流れ,「型」とも言える手順を身につけるとよいでしょう。欧米でも日本でも,医療面接に関してさまざまな実験が行われ,エビデンスと呼んでも遜色ない研究結果が多数存在します。『戦略としての医療面接術』の中では,読者が科学的に医療面接に臨...
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