医学界新聞

2015.08.03



身体診察,匠の技を共有

雑誌『総合診療』誌名変更記念セミナー開催


 山中克郎氏(諏訪中央病院),徳田安春氏(地域医療機能推進機構本部)の両氏を講師に迎えたセミナー「Dr.山中×Dr.徳田秘伝! フィジカル実演レクチャー――カラスが鳴かない日はあっても,診察を愉しまない日はない♪」が,6月21日,医学書院(東京都文京区)にて開催された。同セミナーは,総合診療医を対象とした雑誌『JIM』(医学書院)が,本年より『総合診療』に誌名変更したことを記念して行われたもの。同誌で編集委員を務め,身体診察の名手として知られる山中氏と徳田氏が,自身の臨床経験から得た学びを織り交ぜ,実演しながら身体診察のポイントを解説した。

身体診察を身につけ,患者に安心を

 「神経診察を含め,身体診察で重要なのは問診とバイタルサイン」。神経診察について説明した山中氏は,患者の年齢や病歴,生活歴,日常生活のどのような点に困っているのかを聞きとる問診の重要性を指摘。さらに,バイタルサインから身体の状態を知ることで,患者の全体像をイメージでき,異常な所見を推定し,診断を絞り込むことができると話した。具体的な神経診察の方法については,脳神経系,運動・反射,知覚系などの手技を紹介。異常歩行のポイントの解説時には,診察室で実際に見られる小刻み歩行,舞踏病の歩行などを,山中氏自身が演じる一幕もあった。氏は神経診察の良い点について,「患者に触れることで優しさを伝え,患者さんの心をぐっと引き寄せることもできる」と語った。

 続いて,腹部診察のポイントを解説したのは徳田氏。上腹部痛,下腹部痛,肝硬変などに対する視診,聴診,触診,打診による所見の取り方について,実演を交えながら説明した。「腹痛の訴えに対してはすぐに触診に移りがちだが,まずは視診を大事にしたい」。冒頭,そのように注意喚起した氏は,視診で患者の全体像をとらえることで,腹痛の原因が腹部ではなく,胸部や泌尿器であることを見極められるケースもあると語った。また,聴診では「Tinkles of musical timber and rushes of accelerated bowel sounds」等,触診では「Referred rebound test of Cope」等,打診では「Midaxillary line resonance by percussion」と,氏が有効だと考える一連の手技を紹介し,個々の注目すべきポイントを解説した。

 セミナーの最後に,徳田氏は「高齢化が進んだ中,複数疾患を抱える患者が入院・外来を問わず増えている。特に高齢者では身体的な問題を抱えるケースは多く,所見を探しにいくための技術を磨くことが重要」と,適切な身体診察の方法を身に付ける必要性を主張。一方の山中氏は「身体に触れる診察が患者にも安心をもたらす。それは医師にとって大切なことだと思う」と述べ,セミナーを終えた。

セミナーの模様

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