医学界新聞

2015.06.29



Medical Library 書評・新刊案内


脳卒中ビジュアルテキスト 第4版

荒木 信夫,高木 誠,厚東 篤生 著

《評 者》鈴木則宏(慶大教授・神経内科学)

座右に置いておきたい珠玉の脳卒中テキスト

 脳卒中学のバイブル『脳卒中ビジュアルテキスト』が7年ぶりに改訂された。本書が故・海老原進一郎慶大客員教授,高木康行前・東京都済生会中央病院院長補佐,そして厚東篤生よみうりランド慶友病院院長(初版発刊当時慶大神経内科専任講師)の三方により,慶大神経内科の脳卒中診療の実践を根幹として著された名著であることは,脳卒中診療に携わる医療関係者万人の知るところであろう。1989年3月の初版出版後,版を重ねその都度,脳卒中学および神経内科学の進歩を取り入れ,改訂第3版が出版されたのが2008年であった。改訂第3版からは脳血管障害の臨床と神経病理学の大家である厚東博士を大黒柱として著者が若返った。脳卒中臨床の泰斗である埼玉医大神経内科教授の荒木信夫博士と東京都済生会中央病院院長の高木誠博士が新たな著者として加わっている。脳卒中の診療と治療および再発予防の進歩は日進月歩であり,脳梗塞急性期治療におけるt-PAの適応時間の延長や脳血管内治療技術の進歩などここ数年新たな動きがみられ,久しく改訂版の登場が待たれていたが,ついに2015年,内容も装丁も一新されここに改訂第4版が登場した。

 一読して瞬時に気が付くのは,本書の最大の特色である「イラスト」がかなりの割合で斬新で美しく,しかも「わかりやすい」ものに差し替えられ,あるいは新たに挿入されていることである。初版のイラストと比較して眺めると,医学教科書にも各時代にマッチした流れとセンスがあることが一目瞭然である。

 本書は,常に進歩しつつある脳卒中学の「今」の知識と情報を,state of artsのイラストとともに,われわれ読者に惜しげもなく披露してくれているのである。ぜひまず書店で本書を手に取り,数ページを繰っていただきたいと思う。思わず座右に置いておきたいと思わせる魔法のような抗し難い魅力に圧倒されることと思う。

 内容は9つの章からなり,脳の解剖に始まり,診察の進め方,主要症候,脳ヘルニア,主要疾患,治療,後遺症と対策,予防,リハビリテーションへと進む。本書を眺めてみると,今回の改訂で注目すべきは,第5章「脳卒中の主要疾患」の分類の記述の斬新さである。「脳梗塞の臨床病型による分類」と「脳梗塞の閉塞血管と梗塞部位による分類」に明瞭に分けて記述され,極めて理解しやすい。まさに,臨床神経学における症候から病巣診断に至る「神経診断学」の王道が,脳卒中の臨床に存在することを指し示してくれているのである。すなわち本書により,臨床神経学の基本が脳卒中学に...

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