医学界新聞

対談・座談会

2014.12.22



【座談会】

よい病院はどうあるべきか
『病院』74巻1号より

井伊 雅子氏
(一橋大学 国際・公共政策大学院教授)
伊関 友伸氏
(城西大学経営学部 マネジメント総合学科教授)
今村 英仁氏
(公益財団法人慈愛会 理事長)
神野 正博氏
(社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院理事長)
=司会
松田 晋哉氏
(産業医科大学 公衆衛生学教室教授)
山田 隆司氏
(公益社団法人地域医療振興協会 台東区立台東病院管理者)


 「よい病院はどうあるべきか」を追求するために1949年に創刊された『病院』誌は,「地域医療計画/地域医療ビジョン」を年間テーマに設定し,2015年1月号より誌面をリニューアルする。創刊の原点に立ち返り,「よい病院」の姿を模索すべく,現編集委員の6氏が議論した。本紙では,座談会の模様をダイジェストでお伝えする[全文は『病院』(74巻1号)に掲載]。


神野 では,病院管理者の立場から,今村先生お願いします。

今村 地域包括ケアシステムの構築を進めるという観点からは,地域で必要とされるかどうかが「よい病院」の1つの指標になるでしょう。たとえ高度医療をやっていたとしても,地域の支持が得られないということであれば,よい病院とは言えないのかもしれないと考えています。

神野 山田先生はいかがでしょうか。

山田 経営的に病院を継続していくこと自体がかなり厳しい環境に置かれています。何をやってもコストがかかる一方で,収入は国が認めてくれたことしか点数にならない。あるいは医療制度が変わるごとに,それを機敏に見通し,政策のねらいを理解してついていかなければいけない。一方で,地域の中で必ず病院が担わなければいけない役割もある。そんな中でも住民の皆さんが安心していられるための受け皿づくりを常に考えていくことが,「よい病院」として生き残るための最低限のことだと痛感しています。

神野 私も管理者ですので,一言申し上げます。当院は今年でちょうど80周年です。子どもがたくさんいて,多様な産業があって,港が栄えていた当時と今とでは,地域のニーズも違ってきています。高齢化率も非常に高い地域で,これからの病院を考えていかなければいけない。もしかしたらニーズだけではなくて,先回りというか,シーズに対しても先手を打って考えていく必要があるのかなと思います。

 私が目指したい「よい病院」の条件は,面倒見のよさです。全部を自前で引き受けるのではなく連携も含めて,急性期医療から在宅あるいは介護までの道筋を描けるか。それがまさに地域包括ケアであり,地域医療ビジョンだと思います。それを打ち出していけるような病院でないと,これからの超高齢社会を乗り越えるのはなかなか難しいでしょう。

地域の安心を保証するのが「よい病院」

神野 井伊先生には経済学の面から少しコメントをいただけますか。

井伊 日本の中小病院の現状を考えると,規模が大きい病院へ二・三次医療が集約されて,プライマリ・ケアに特化した病院を目指すこともあると思います。その地域に応じた役割を果たしてほしいです。また,日本の病院は民間病院が多いですが,ほとんどの医療やケアが公的医療保険で提供されている限り,「公的な存在である」ことも意識するべきと思います。

神野 松田先生,研究者のお立場からいかがでしょうか...

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