病院職員構成の多様化と感染対策(坂本史衣)
寄稿
2014.12.22
【寄稿】
病院職員構成の多様化と感染対策
坂本 史衣(聖路加国際病院 QIセンター感染管理室 マネジャー)
病院には,医療関連感染のリスクが生じる機会が無数にあります。例えば,職員が患者に触れる時であったり,侵襲的な処置を行う時であったり,廃棄物を処理する時であったりと,さまざまなタイミングで存在しています。これらの機会に生じる感染リスクを低減するには,そこに関与する全ての職員に,必要とされる対策を周知し,実施を促せばよいというのはあまりにも自明です。しかし,今日の病院において,それには大きな困難が伴うようになりました。
増える「非正規職員」,感染対策の周知が必須
かつて感染リスクが生じる機会に関与していたのは,主にフルタイムで働く正規雇用の職員でした。そのため,感染対策を取り決める際は,病院関係者だけで協議すれば済みましたし,対策を周知する方法や経路も,比較的単純でした。つまり,何度か集合研修を行い,部門管理者等を通して伝達すれば大多数の職員に対策を周知することができました。また,職員には,雇用主である病院の方針や手順に対するある程度のコミットメントも期待できました。
ところが近年は,病院業務の分業化,外注化が進んだため,委託,派遣,パート,アルバイト等のいわゆる「非正規職員」が多数雇用されるようになっています。従業員の3-4人に1人は非正規職員という比率も最近では珍しくありません。そして,これらの非正規職員も,常勤正規職員と同様に,直接的,間接的に感染リスクが生じる機会に日常的に関与するようになっているのです(表1)。
表1 病院で非正規職員が担うことが多い業務と,業務に伴う主要な感染リスク | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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*業務にかかわらず,全ての職員に麻疹,風疹,ムンプス,水痘,インフルエンザ等の急性ウイルス感染のリスクがある |
したがって,非正規職員に対しても感染対策を周知し,実施を促す必要があるわけですが,雇用主や働き方の多様性ゆえに,クリアすべき課題は多数存在しています(表2)。また,法令上も,病院と雇用関係にある職員については,感染対策に関する研修を行う義務が病院に課せられているのですが1),それ以外の職員については,規定が設けられていません。そのため,特に委託業者については,第三者機関による病院機能評価を受ける場合を除き,病院が自主的に研修を行うための動機付けが存在しません。
表2 非正規職員への感染対策の周知・推進に伴う課題 | |
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