医学界新聞

2014.12.15



実践の科学としての看護学構築へ

第34回日本看護科学学会学術集会開催


 第34回日本看護科学学会学術集会が,11月29-30日,鎌倉やよい会長(愛知県立大)のもと,名古屋国際会議場(名古屋市)で開催された。「看護ケア学の構築をめざす――研究成果を臨床へ」をテーマに掲げた今回,本紙では「看護ケア学」の構築に向けた「看護ケアプログラム」開発の必要性が語られた講演と,プログラムの臨床への還元と定着について検討されたシンポジウムの模様を報告する。


看護診断体系化の次は「看護ケアプログラム」の開発

鎌倉やよい会長
 超高齢社会の進行や日本人の疾病構造の変化により,看護学を取り巻く環境は大きく変化している。これから10年先,あるいは50年先の看護学の未来はどのように構想していくべきか。鎌倉やよい氏による会長講演「看護ケア学構築へ向けての展望」では,実践の科学としての看護学が今後発展するために求められる方策が示された。

 「看護学は研究成果を実践の場に還元できているか」。こう問うた氏は,質的研究や調査研究が多い看護研究は,医師から「エビデンスが不十分」との批判を受けることもある一方で,看護診断の体系化と蓄積により患者理解に大きく貢献してきたと評価。看護師は他の専門職と比較すると「診療の補助」として「医師の指示の下に広い範囲の医行為」が認められている点に触れ,今後は,看護診断に対応した看護ケアの方法論の確立が求められると主張した。在宅医療の推進に主眼が置かれる今,看護師には患者の生活を援助する視点,退院後に患者がセルフケアできるように促す視点が求められている。そこで氏は,看護診断として提示された問題に対し,アセスメントに基づき解決を指向する,複数の看護技術から構成される「看護ケアプログラム」の必要性を強調。この開発と,標準化,体系化を行っていくことが「看護ケア学」の構築につながると訴えた。

いかに臨床への定着を図るか

 看護ケアプログラムの開発の次に求められるのが,プログラムの定着だ。シンポジウム「看護ケアプログラムのイノベーションに向けた方略」(座長=愛知県立大・山口桂子氏,同大・鎌倉やよい氏)では,シンポジスト4氏の取り組みが紹介された。

 初めに登壇した若本恵子氏(虎の門病院)は,看護師の院内教育プログラム開発と定着に向けた取り組みについて解説した。同院では,看護実践能力向上を目的にプライマリ・ナーシングコースと呼ばれる院内教育プログラムを1988年から運用しており,現在では入門,中級,上級の各コースを設けている。看護実践の熟達化の過程では,一人前になる壁,中堅者になる壁,熟達者になる壁,と各段階に壁があり,それを乗り越えることで実践のパフォーマンスが一段階上がるとされる。壁を越えるには「熟慮を伴う練習」が必要であり,各コースがこの「熟慮の場」となる。同プログラムは臨床現場での学習を前提とし,実践と学習を繰り返すことで実践知の獲得につながるよう企図されているという。氏は,教育プログラムの定着には熟慮による実践知の獲得や,受講者同士の興味関心を共有するなど一体感を持った連携,あるいは看護実践の変化を成果として実感できる場が必要になると述べた。

 がん医療の均てん化促進の一環として,がん化学療法を安全に行うためのマニュアル作成について報告したのは戸崎加奈江氏(愛知県がんセンター中央病院)。大腸がんの治療薬として2009年から使用されるようになったセツキシマブは,特徴的な皮膚障害の副作用があり,当初,そのアセスメントへの不安が想定された。そこで,同センターを中心に愛知県内のがん診療連携拠点病院7施設の医師・看護師・薬剤師による多施設多職種協働でマニュアルの作成を開始。まず,投与時の問題点を看護チームが挙げ,次に職種横断で解決方法や対策を検討し,アセス...

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