医学界新聞

寄稿

2014.10.06



【視点】

情報爆発時代に果たすべき解剖学教員の役割とは

秋田 恵一(東京医科歯科大学大学院教授・臨床解剖学)


 医学生が学部教育を受けるにあたり,最初に苦痛に感じるのは肉眼解剖学ではないかと思う。大量の解剖学用語があり,グローバル化の流れゆえに,英語でも用語を学ぶ必要がある。これらを短期間で習得し,他の科目でも困らずに使いこなせるようにならなくてはならない。一般に肉眼解剖学は新しい事項が増えないため,内容は増加しないと考えられている。しかし,解剖学の教科書,アトラスなどは次々に刊行されており,選ぶのが難しいほどだ。

 近年の肉眼解剖学の本をいくつか並べてみると,厚いもの薄いものさまざまだが,コアになる部分以外は,臨床関連項目と効率的に学習を進める工夫のためのページ量に違いがあるだけだ。20世紀初頭までの教科書では鼠径部の解剖に多くのページが割かれていたように,その時代に必要な臨床に対応して臨床的に注目されている項目のページが増減することになる。無味乾燥な用語の羅列ともとられかねない記述を,少しでも魅力的に見せるために施された工夫は,どの解剖学書も素晴らしい。しかし,それよりも注目すべきは100年前のアトラスに比べ,人間の構造が極めて単純に描かれるようになっていることだ。複雑すぎる構造が理解を妨げるとされたためか,筋の形や血管,神経の分岐はことごとく単純化され,記述も非常にわかりやすくなっている。このように人間がどんどん“単純”になり,記憶しやすいように進化していくのであれば,教員にとっても学生にとって...

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