医学界新聞

2014.09.29



第16回日本褥瘡学会開催


 第16回日本褥瘡学会(会長=国立長寿医療研究センター・古田勝経氏)が,8月29-30日,名古屋国際会議場(愛知県名古屋市)にて開催された。「長寿社会における褥瘡医療・ケアの融合」をテーマに掲げた今回,医師,看護師,薬剤師などの職種を中心に,過去最多となる約6800人の医療者が集まった。本紙では,褥瘡を有する患者に対する体位変換をめぐって議論したシンポジウムの模様を報告する。


古田勝経会長
 日常生活動作を援助する行為として実施される体位変換。同一体位による底面部の圧迫から生じる循環障害や感覚麻痺を避ける,筋肉の萎縮や機能低下を予防するなどの目的で,「2時間ごとの体位変換」をルーティン化している職場も少なくない。だが,昨今,「褥瘡を有する患者」に対しては,体位変換が創傷の変化・変形をもたらし,結果的に難治化の原因となっているのではないかという懸念も生じている。シンポジウム「体位変換の新たなステージ」(司会=前京大大学院・宮地良樹氏,淑徳大・田中秀子氏)では,褥瘡を有する患者に対する体位変換をいかに行うべきかについて議論された。

見過ごされてきた“動的外力”

 まず大浦武彦氏(褥瘡・創傷治癒研究所)が,体位変換が与える褥瘡への影響について説明した。これまで,体位変換による体圧のかかる部位の移動と分散という“静的外力”を排除する効果が重視されてきた一方で,体位変換の際に生じる創面に変化・変形を与える,圧とずれといった“動的外力”の存在が配慮されてこなかったと指摘。この動的外力が,褥瘡特有の外力性ポケット,段差,肉芽塊,裂隙などを作るだけでなく,難治性慢性潰瘍の原因にもなっていると分析した。今後は褥瘡を有するケースを考慮し,動的外力を排除した創に優しい体位変換の検討が求められると訴えた。

 理学療法士の北出貴則氏(誠佑記念病院)は,これまでベッド上での褥瘡予防の技術として扱われてきたポジショニングが,摂食嚥下や呼吸リハビリテーションの中でも取り入れられていることを紹介。褥瘡予防に加え,快適性,摂食・嚥下機能,呼吸状態などに対する影響を考慮したケア技術として発展させる必要性を述べた。

 体位変換の際の姿勢の変化や患者自身の体重により,寝具...

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