日本看護学教育学会第24回学術集会開催
2014.09.22
看護学教育が担う次代の学習支援とは
日本看護学教育学会第24回学術集会開催
日本看護学教育学会第24回学術集会が,8月26-27日,村中陽子会長(順大)のもと,幕張メッセ・国際会議場(千葉市)で開催された。今回のテーマは「関連学問との知とともに創りだす看護学教育」。本紙では,学生の学ぶ姿勢,学習意欲を高める教育の在り方を検討した,2つのセッションの模様を報告する。
現象学的アプローチから学生の実習支援を考える
村中陽子会長 |
学生の「身体性」に着目し,教員が実習指導を行う上で助けとなる着眼点を示したのは西村ユミ氏(首都大学東京)。全身のほとんどが動かない患者に対し,傍らで2時間以上立ちすくむ学生,高熱・嘔吐で苦しむ患児の前から離れられず逡巡する学生,これら2人の例を提示した。患者の前で動けなかった学生の観察から,氏は学生自身が患者に対し「返事ができないのかもしれない」と思うことを「引き寄せられる病い」,「返事をしたくないのかもしれない」と思うことを「押し戻される病い」と表現。この2つの思いに揺れる学生の姿には,動かぬ病む身体との「対話」が内在し,患者の病をも反映していると解説した。メルロ=ポンティの言葉「世界というものは,それについて私のなし得る一切の分析に先立ってすでにそこに在るもの」を引き,2人の学生は「理論的な“知”が働き出す手前で,相手の苦悩に応答し始めている」と考察。このように現象学を足がかりにすることで,「教員は先入見を自覚し問い直すことができ,さまざまな意味の理解を更新させることにつながる」と語った。
次に「素人性」をキーワードに,初学者ならではの一見失敗に見える態度を,教員が肯定的に評価する視点を示したのは,社会福祉士の養成に携わる福田俊子氏(聖隷クリストファー大)。「素人性」を「これまでの人生で培ってきた生活感覚を駆使して利用者とかかわること」と定義し,介護福祉施設で実習を受けた学生による,認知症の施設利用者とのやりとりを分析した。実習中,利用者に振り回されながらも関係を保とうとする学生は,知識や対処法をまだ十分に持ち合わせない“素人”ゆえに,利用者を無理にコントロールしようとしなかった。氏は,その素朴な感覚が素人性ならではの「かかわりの余白」「徹底的に一緒にいる意義」を生成したと考察。「素人性」は,「倫理的なかかわり,人としてのかかわりとは何かという専門職が見失いがちな問いを突き付けている」と語った。
続いて登壇した前川幸子氏(甲南女子大)は,実習における看護学生の「未決性」の持つ意義に焦点を当て2人の学生の例を紹介した。1人は,実習先の担当患者のカルテに“短気”と書かれているのを目にするも,実際は自分の意見・意思をしっかり持って発言する患者だと気付いた例。もう1人は,担当患者の特徴について看護師から「何回も同じ話をする...
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