医学界新聞

2013.07.01

Medical Library 書評・新刊案内


ジェネラリストのための内科外来マニュアル

金城 光代,金城 紀与史,岸田 直樹 編

《評 者》徳田 安春(筑波大教授・同大附属水戸地域医療教育センター/水戸協同病院総合診療科)

内科系外来に従事する全ての医師に薦めたい

 最近,ジェネラリスト医師が増えてきている。スペシャリストからジェネラリストへ転向する医師,スペシャリティーを持ちながらジェネラリストとしてのスキルを身につけている医師,ジェネラリスト志向の研修医や医学生など,その人口が爆発的に増えてきている。新規開業の診療所では「総合内科」の看板で開業すると患者に人気が高くなる。病院内でも「総合内科」はもはや尊敬語となっている。

 このような中,ジェネラリスト向けの書籍が最近とても人気が出てきている。救急や入院場面でよく遭遇する問題に焦点を当てた書籍が多い中,ついに総合内科の外来現場で大変役に立つ実践的マニュアルが出てきた。本書がそれである。著者は手稲渓仁会病院と沖縄県立中部病院の総合内科スタッフ陣であり,総合内科業界では東と西の大関クラスの病院である。手稲渓仁会病院総合内科のメンバーももともと中部病院の総合内科出身者が主体となって発足しているので,兄弟大関と呼んでよい。編著者の金城光代氏,金城紀与史氏と岸田直樹氏はもともと手稲渓仁会病院での子弟関係にある。著者メンバーの芹沢良幹氏と西垂水和隆氏も中部病院研修出身であるが,手稲渓仁会病院で両金城氏と同僚であり岸田氏の指導医であった。完成度の高い総合内科医グループが書いた信頼性の高いマニュアルである。

 各章冒頭の疾患別戦略リストは,多忙な外来現場に即応でき便利である。内容もアルゴリズムや表が多用されており,理解しやすく記憶しやすい。コラム的に挿入されたPhysician’s Memoはクリニカルパールが満載である。クリニカルパールの神様であるローレンス・ティアニー氏が推薦のことばで内科外来スキル習得の重要性について深く語っている。総合内科外来スキルの完成度を高めるため,内科系外来に従事する全ての医師が本書を読まれるよう推薦する次第である。

A5変・頁576 定価5,460円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01784-8


作業療法がわかる
PBLテュートリアルStep by Step

宮前 珠子,新宮 尚人 編

《評 者》岩崎 テル子(新潟医療福祉大名誉教授)

作業療法教員にとって福音となる貴重な成書

 “教員の役割は,決して答えを教えるのではなく,学習のきっかけ作りと,途中の道標を示すこと”と編者のお一人の新宮尚人氏は「おわりに」に記している。Problem-Based Learning(PBLテュートリアル,問題基盤型学習)の実践者の感慨である。“テュートリアル”とは,少人数のグループ学習をテューターと呼ばれる担当教員が相談に乗り助言する方式を指す。この学習法の核は,(1)適切な課題(事例・シナリオとも呼ばれる)の設定(問題基盤型学習),(2)学生の学習意欲の自発的喚起(自己主導型学習),(3)小グループ学習による学生の知的・情緒的変化(グループダイナミクス)の惹起であると言える。

 現在,作業療法養成校は175校ある(2013年3月31日時点)。専任教員数は日本作業療法士協会の2011年度教育部調査より推計すると1500人弱になる。修士・博士号を持つ者が50%を超える。教員の多くが臨床経験年数か研究業績によって採用された者で,教育学を修めた者は少ない。そして結果,“お友達”教員や,“威圧的”教員となるのであるが,いずれも教育方法に悩んだ末に“学生の質が悪い”ことにしてしまうことも多々ある。

 本書は,このような悩める教員にとっての福音になる。実践方法の説明に大部分が割かれ,簡潔で実例は豊富,提示されたプロセスを見習って実践すれば一定の成果が得られることと思う。学会や研究会の報告を見る限り,PBLテュートリアルは全国の作業療法教育で部分的に実践されているようだが,学科を挙げて,しかも全専門科目で実施したのは,聖隷クリストファー大学が初めてである。編者の宮前珠子氏の熱意と強力なリーダーシップの賜物であろう。同大は2004年開学であるが,設計段階からグループ活動のために多くの小部屋を用意し,赴任予定教員と討議を重ねて価値観を共有した由である。やはりこのように徹底しないと成果は得られないのだと感じる。

 本書は3部構成で,Part1で概論と専門4領域の担当教員による実践事例が呈示されている。文字どおり“Step by Step”で,グループ分けの方法,代表的な症例とグループ活動用のシナリオが何通りか示される。学習の手順とテューターガイド,評価方法も付いていて,この良き教育法が広まってほしいという編者の思いが伝わってくる。学生による授業評価(フィードバック)とPBLに対する学生の感想も掲載されているので参考になる。小グ...

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