医学界新聞

2013.05.13

Medical Library 書評・新刊案内


神経内科学ノート
国試から臨床まで

佐々木 彰一 著

《評 者》岩田 誠(女子医大名誉教授/メディカルクリニック柿の木坂院長)

170ページで神経内科学の全てを読む

 数年前に私の親しい友人で,長年の同僚である佐々木彰一先生から,学生向けの教科書を執筆中であると聞いた私は,これはきっと役に立つ素晴らしい教科書ができるに違いないと思った。私たちが共に働いてきた東京女子医科大学では,国家試験の受験を迎える最終学年の学生に対し,各領域の復習として補講を行ってきた。それに際しては,学生たちにどの教師の講義を聴きたいかのアンケートをとり,その結果に従って補講カリキュラムを組んできたのだが,神経内科領域では毎年佐々木先生の希望が最多であり,いつも彼に講義をお願いしていた。佐々木先生から教科書執筆のことを聞いた途端に,このことを思い出し,その教科書の刊行を心待ちにしていたのである。

 数日前,その教科書を佐々木先生自身から手渡されたとき,私はまず,グレイの落ち着いた表紙からなるスマートな外見に感心した。そしてページを繰ると,目に飛び込んでくるのは,実に美しいカラー図版の口絵である。佐々木先生は,大変に経験豊富,かつ優れた判断能力を持つ神経内科の臨床医であると同時に,ニューヨークのモンテフィオーレ・メディカルセンターにおいて平野朝雄先生の下で神経病理学を学ばれ,形態学の<1>蘊奥を究めた研究者でもある。本書冒頭の口絵は,形態学者としての彼の面目躍如たるものであり,それを見ているだけでも,ほれぼれとする思いである。

 本書における佐々木先生らしいもう一つの特徴は,神経解剖学を主体とした総論の章である。ここには,神経画像法によるマクロな形態から,彼の得意とする電子顕微鏡下の微細構造に至るまでの形態学が,明快な模式図とともに示されていて,極めてわかりやすい。それに続く神経学的診察の章も,常に解剖学的な理解の上に成立した症候学を展開している。私は,神経内科学における臨床活動の基礎は神経解剖学であり,形態学的な基礎のない臨床神経内科学は,机上の空論にすぎないと思っている。佐々木先生はそのような私の信念を最もよく知る仲間であるが,これら二つの章が,私たち二人の共通の信念に従って書かれたことに,私は大いに満足している。

 さて,本書の後半は,各論として

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