医学界新聞

連載

2012.11.12

〔連載〕続 アメリカ医療の光と影  第233回

「最先端」医療費抑制策
マサチューセッツ州の試み(3)

李 啓充 医師/作家(在ボストン)


2998号よりつづく

 前回までのあらすじ:1992年にマサチューセッツ州が診療報酬決定プロセスを自由化した目的は医療費抑制にあった。しかし,巨大医療企業「パートナーズ」が強大な価格交渉力に物を言わせて医療サービス価格を押し上げたため,同州の医療費は逆に高騰し続けた。


医療企業「パートナーズ」の拡大路線

 ハーバード系の二大名門病院,ブリガム&ウィメンズ・ホスピタルとマサチューセッツ・ジェネラル・ホスピタル(MGH)とが合併してできた医療企業「パートナーズ・ヘルスケア」(以下,パートナーズ)が正式に発足したのは,94年のことだった。

 その後,急速に規模を拡大,ボストン近郊のコミュニティ病院に加えて,精神科の名門,マクリーン・ホスピタル,リハビリの名門,スポールディング・リハビリテーション・ホスピタルをも傘下に収めた。さらに,(総数約6000人とされる)開業医ネットワーク,HMO,在宅医療企業,看護・医療技術大学院等も組み入れ,いまや,「巨大複合医療企業」として,マサチューセッツ州医療界に君臨している。

 パートナーズが保険会社から割高の診療報酬を得るようになった経緯は前回説明したが,一例として胸部X線写真の「値段」の病院間格差を以下に示す。

・パートナーズ基幹病院
 MGH       $160
・パートナーズ系列コミュニティ病院
 フォークナー病院 $120
・非系列コミュニティ病院
 ブロックトン病院 $80
 ミルトン病院   $90

 胸部X線写真の質がこれらの病院間

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