医学界新聞

寄稿

2012.11.05

私と医学界新聞


 『週刊医学界新聞』3000号発刊を記念し,弊紙と深いかかわりのある方々にご寄稿いただいた特別企画。今回は,弊紙レジデント号(旧医学生・研修医版)となじみが深い先生方に,弊紙との思い出を振り返っていただきました。


腫瘍内科の確立に大きな後押しとなった

勝俣 範之(日本医科大学武蔵小杉病院教授・腫瘍内科学)


 私と医学界新聞とのお付き合いは,第2260号(1997年10月13日発行)医学生・研修医版座談会「がん診療におけるmedical oncology」からになります。2012年の今となり,やっと腫瘍内科(medical oncology)という専門科が医学界の中で認識されてきたという状況なのですが,15年前当時は腫瘍内科という分野はほとんど注目されていない分野でした。そのようななか,医学界新聞は先進的にわれわれの取り組みを取り上げ,2005年には,「腫瘍内科――がんをトータルに診る時代」という連載を企画しました(第26192654号)。この後,腫瘍内科専門医(がん薬物療法専門医)制度が確立(2006年)し,現在までに700人以上の専門医が生まれ,がん対策基本法にもがん薬物療法専門医の必要性が記されるようになりました。腫瘍内科が確立されていった背景には,医学界新聞が,われわれを大きく後押ししてくれたことがあると感謝しています。特に,確立された領域がまだない診療科では,医学生・研修医への啓蒙が大切なのですが,ことあるごとに座談会(第2659号,2005年11月21日発行)や,セミナー(第2698号,2006年9月11日発行)などを記事にしてもらえたことは大変ありがたかったです。

 医学生・研修医版は,医学生のころから愛読していました。学閥にとらわれることのない斬新な企画は,いつも刺激的で勉強になりました。レジデント号での名物新春企画である「In My Resident Life」には,私も2007年の第2715号(2007年1月15日発行)に寄稿しましたが,有名な先生方のレジデント時代の失敗談などが掲載されており,現在も愛読しています。

 今後も,医学界新聞がいつも医学生・研修医の味方であり,時代を先取りした情報を発信し,日本の医学界に多大なる刺激を与え続けてくれることを願ってやみません。


私のキャリアパスを決めた連載

伴 信太郎(名古屋大学大学院教授・総合診療医学)


 私の原稿が初めて医学界新聞に掲載されたのは,第1597号(下写真,1984年4月30日発行)から第1614号(1984年9月3日発行)まで連載された「アメリカにおける家庭医研修(全15回)」でした。これは,留学当時所属していた国立長崎中央病院(現国立病院機構長崎医療センター)に定期的に送っていた報告書を元に書いたものです。この連載は,後に何人もの若い人から,刺激を受けて留学をめざした,あるいは家庭医をめざしたとの言葉をもらって大変うれしく思ったのを今でも覚えています。

 「アメリカにおける家庭医研修」で書いたことは,二つにまとめられます。(1)日本では基本的臨床能力教育が不十分であること,(2)ジェネラリスト教育も一つの重要な専門医療教育であること(言葉を変えて言えば,家庭医学も一つの専門領域であること),です。さらに,私が帰国したときには既に国立長崎中央病院を離れておられましたが,留学前お世話になった岩崎榮先生のお誘いを受けて日本医学教育学会の門をたたいたことが,その後の私のキャリアパスを決めることにつながりました。すなわち前述の二つのテーマを医学教育という切り口で展開・推進するということです。

 一般の新聞を見ていても,朝日新聞によく登場する人,産経新聞によく登場する人などの傾向がみられるようです。これは思想的な背景もあると思いますが,記者や編集者との人間的なつながりが大きいということがあるのではないでしょうか。

 私も,最初の連載の後,座談会や対談のほか,私がかかわるさまざまな学会やセミナーのことを医学界新聞に取り上げてもらいました。インターネットが発達し,さまざまなソーシャル・ネットワーキング・サービスの活用が可能な今日では,多様な発信の仕方が可能になってきました。しかし,私が医学界新聞に連載を持っていた当時は,発表の機会は限られていました。このような発表の機会が,私に社会的責任を自覚させ,自らの成長に向けた努力の後押しとなったことは,大変幸せであったと感じています。

連載「アメリカにおける家庭医研修」(第1回)の記事


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