医学界新聞

2012.10.08

Medical Library 書評・新刊案内


研修医のためのリスクマネジメントの鉄則
日常臨床でトラブルをどう防ぐのか?

田中 まゆみ 著

《評 者》日野原 重明(聖路加国際病院理事長)

新医師臨床研修のための必読書

 このたび医学書院から,田中まゆみ先生の『研修医のためのリスクマネジメントの鉄則――日常臨床でトラブルをどう防ぐのか?』というA5判168ページの本が出版された。

 田中先生は,京大医学部卒業後,京大大学院を出て,ボストンのマサチューセッツ総合病院で研修を受け,さらにボストン大学公衆衛生大学院を修了し,帰国後,聖路加国際病院の総合臨床外来を経て,現在は北野病院総合内科部長(北野病院は,大阪市にある京大医学部の関連病院)として勤務している。

 田中先生は,私が理事長をしている聖路加国際病院で2012年までの6年間一般内科の副医長を務め,研修医の教育に携わってこられた。

 その後北野病院に移り,研修医の教育指導を通して,研修医が臨床の前線で患者を診療している中で,どうすればそのトラブルを防ぐことができるかについて,いくつかの鉄則を示して警告される。その生の声がこの本である。

 本書によって,研修医が,日本の法律体系を熟知しないことから起こる医療訴訟に巻き込まれないように警告したいという。内容は,次の5章に分類される。第1章は,「医師に求められるリスクマネジメント」。第2章は,「リスクマネジメントの基本としてのインフォームド・コンセントの手順」。第3章は,「リスクマネジメントのABCD」(A : Anticipate―予見する,B : Behave―態度を慎む,C : Communicate―よく話し合う,D : Document―記録する)。第4章は,「検証―『リスクマネジメントのABCD』でケースをみる」。第5章は,「ケースで理解するリスクマネジメントの鉄則」(これには12例の症例が紹介されている)。

 著者は,新医師臨床研修制度の根幹である「医師としての人格の涵養に役立たせたい」という思いを後記に書いておられるが,私は本書を研修のための必読の書として推薦したい。

A5・頁168 定価2,625円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00439-8


顕微鏡検査ハンドブック
臨床に役立つ形態学

菅野 治重,相原 雅典,伊瀬 恵子,伊藤 仁,手島 伸一,矢冨 裕 編

《評 者》渡辺 彰(東北大加齢医学研究所教授・抗感染症薬開発寄附研究部門)

臨床医学に役立つ顕微鏡検査のすべてがここにある!

 臨床医学に大きく役立つ顕微鏡検査のすべてがここにある! これが私の第一印象である。本書は微生物検査だけでなく,細胞診,血液像,尿沈渣,病理などの顕微鏡検査法があまねく,しかも互いに連携を保って網羅・解説されており,これが本書の最大の特色である。すなわち,横断的な編集であり,しかも各分野が有機的に連携されていて,統一した視点から編集されている。今日の臨床医学に最も欠けている部分は本書によって埋められるものと考える。

 これまでは,そうではなかった! 病院や検査センターにおける顕微鏡検査は,各分野に分かれて行われており,互いの連絡や接触は希薄であった。臨床検査法の教科書も同様であった。すなわち,縦割りの検査が行われており,教科書も縦割りだったのである。皆がたこつぼにこもっているので,互いの様子は互いによくわからない。たこつぼから臨床へ有用な情報を発信することはできるだろうか? できるわけはなく,これが今日の臨床検査・臨床医学の大きな欠陥となっていたが,本書はその欠陥を埋める良いハンドブックとなっている。編者の先生方の力量に負うところが極めて大きいが,わが国の微生物検査に携わる医師と臨床検査技師の中で,本書の編集代表である菅野治重先生を知らない人はいない。

 本書は,菅野先生をはじめとする編者の方々および執筆者の方々が他の分野にも広く名を知られるようになる第一歩の一冊でもあると思われる。それは本書が,

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