医学界新聞

連載

2012.04.09

外来診療
次の一手

第1回】「昨日から3回も吐いてしまいました」

前野哲博(筑波大学附属病院 総合診療科教授)=監修
小曽根早知子(筑波大学附属病院 総合診療科)=執筆


 外来と病棟の最大の違い――。それは,"外来患者は診断がついていない"ということです。主訴から始まる患者の病歴情報は,時に膨大なものになります。診療に時間的制約がある外来では,すべての情報を網羅的に集めるのは現実的ではなく,外来担当医は,情報収集と同時進行で鑑別診断を考えつつ,さらに集めるべき病歴や身体所見,必要な検査項目を手際よく絞り込んでいかなくてはなりません。

 このように,外来における臨床推論の大きな特徴は,「情報を集めながら考える」というリアルタイム性にあり,本連載ではこの思考ロジックに焦点を当てます。具体的には,最初に病歴のオープニングに当たる短い情報を「症例」として提示し,その限られた情報からどこまで診断に迫れるか,さらに診断を確定あるいは除外するために最も効率的な「次の一手」は何かを考えます。ぜひ皆さんも,自分ならどうするかを考えてみてください。その後,実際に行われたアプローチを提示します。もちろん正解は一つではありませんが,一連のプロセスを通して,外来特有の思考センスを感じ取っていただければと思います。

(前野哲博)


【症例】Aさん 23歳女性

Aさん 「昨日夕方から気持ち悪くなって3回も吐いてしまいました」
Dr. M 「ほかに症状はありますか?」
Aさん 「お腹も時々痛くなります。だんだん頭も痛くなってきて,熱も出てきました」
バイタルサイン:体温37.5℃,血圧112/70 mmHg,脈拍80回/分(整),呼吸数12回/分。

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この病歴から言えることは?

 まず問診票の情報から,「23歳」と若く慢性疾患・悪性疾患の頻度は低いこと,妊娠可能女性であることがわかる。「昨日」から

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