医学界新聞

2012.03.12

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


《神経心理学コレクション》
精神医学再考 神経心理学の立場から

大東 祥孝 著
山鳥 重,河村 満,池田 学 シリーズ編集

《評 者》鈴木 國文(名大教授・精神神経科学)

現在の精神医学の必要に正当に応えた一冊

 『精神医学再考』という大きなタイトルの下に書かれたこの著書は,手にとって読み始めるのに,ひょっとすると少し抵抗感を覚える一書かもしれない。誰しも,いま自分の立っている足場を見直すよう言われれば,二の足を踏むだろうし,大きなタイトルの下に書かれた著書にがっかりさせられた経験を,誰もが一度や二度は持っているからである。が,しかし,現在,精神医学が立っている足場は,精神というものをとらえる方法としてはいかにも貧弱で,どうしたって「再考」せねばならぬものであるということは,多くの心ある精神科医の偽らざる思いであろう。この本は,そうした必要に極めてタイムリー,かつ正当に応えている。現在の精神医学に何が欠け,何が見えていないのかを,精緻な臨床経験と堅固な精神医学史的知見に照らして取り出した上で,本当の必要に応じてなされた「再考」であるだけに,この著書は,決して読む者をがっかりさせることがない。いま,精神医学の中でものを考えようとする者すべてにとって,必読の一書と言えよう。最初から最後まで,実にスリリングな知的体験である。

 著者は,二つの基本的姿勢を出発点としている。一つは精神の活動すべてを「脳という器官」の機能としてとらえる姿勢,もう一つは「認知の過程」と「意識の過程」とは異なるという...

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