医学界新聞

2011.07.18

第45回日本作業療法学会開催


 第45回日本作業療法学会が,6月24-26日,大橋秀行学会長(埼玉県立大)のもと,大宮ソニックシティ(さいたま市)で開催された。今学会のテーマは「意味のある作業の実現」。開催に当たり,大橋氏は「生活・地域の場を生きる患者にとって意味のある作業とは何かを考える場としたい」と狙いを述べた。

◆対象者の想いに応える作業療法を

 シンポジウム「意味のある作業療法の実現――新たに見えつつあるものは何か」では4人のシンポジストが登壇し,対象者にとって価値のある作業療法の在り方について,各演者の経験や実践例を基に議論が交わされた。

開会式のもよう
 最初に登壇した茂木有希子氏(介護老人保健施設しょうわ)は,作業とは「対象者の生きる意味,生きた証につながるかかわり」と考察。対象者の要望に最大限に応えることのできた事例を紹介した上で,提供者の自己満足ではなく,対象者の価値観に向き合っていくことが作業療法に求められると主張した。

 22年間の作業療法士経験を通し,「作業の持つ力を感じる」と語ったのは寺田千秀氏(アマノリハビリテーション病院)。氏は回復期における作業療法の観点から言及。一つのADLの評価項目をとっても,作業療法で行うことのできるアプローチは幅広いことから,対象者の人生観や価値観を踏まえ,対象者とともに実践する作業を選択していく必要性を訴えた。

 発達領域の視点からは,黒澤淳二氏(大阪発達総合療育センター)が発言。作業療法は,対象者の作業を支援するためのいわば「道具」の一つであるという見解を示した。その道具の利用者である作業療法士は,作業療法の専門性を議論するのではなく,ベテランは失敗を,若手は困っている事例を語り,多くの経験則を共有し検討し合うことが対象者にとって意味のある作業につながっていくと提言した。

 太田美津子氏(竹田綜合病院)は,精神疾患を持つ対象者とかかわった事例を紹介し,意味のある作業とは「生きることそのものである」と主張。その上で,作業療法は対象者が生きることを直接的・間接的に促進する支援であり,作業療法士はその実現のためにリハビリテーションチームの一職種として貢献していく使命があると強調した。

 総合討論では,「何もしたくないと訴える対象者に接する方法」「作業療法士の役割を他職種に理解してもらう方法」など,現場の作業療法士が抱えている疑問について,参加者を交えて議論が展開された。総合討論の司会を務めた茂木氏は「対象者こそが作業療法の評価者であることは忘れてはいけない」と結び,盛況のうちにシンポジウムは終了した。

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