医学界新聞

2011.07.18

腎臓病診療の課題に"挑戦"

第54回日本腎臓学会開催


 第54回日本腎臓学会が6月15-17日に佐々木成会長(東京医歯大)のもと,パシフィコ横浜(横浜市)にて開催された。第56回日本透析医学会(6月17-19日開催)とともに「JAPAN KIDNEY WEEK」として執り行われた本学会。「挑戦する腎臓学」をテーマに,基礎から臨床に至る腎臓病学のすべての領域で熱い議論が交わされた。

 本紙では,腎臓再生における最新研究ならびに腎臓病診療におけるモダリティの進歩について議論した,2つのワークショップのもようを報告する。


腎臓再生の神秘に迫る

佐々木成会長
 再生が困難な臓器と考えられてきた腎臓。しかし近年,急性腎不全の回復期には著明な細胞増殖が起こるなど,腎組織にも修復能があることがわかってきた。ワークショップ「腎臓の線維化と再生をになう細胞群を探る」(司会=東大・南学正臣氏,京大・柳田素子氏)では腎臓が本来持つ"再生力"に着目し,その再生プロセスの解明をめざした研究を6人の演者が報告した。

 最初に登壇したのは柳田氏。氏は腎臓のなかで最も障害を受けやすい近位尿細管に注目し研究を展開。近位尿細管を特異的に標識可能なマウスを作製し,その腎臓に人為的に障害を起こさせ修復過程を観察した結果,近位尿細管は近位尿細管自身によって修復されることを見いだした。また,繰り返す障害により近位尿細管が著しく短縮したことから,その修復能は必要十分ではないと指摘。近位尿細管の短縮は,CKD(慢性腎臓病)や老化に伴う腎萎縮の一因である可能性を示した。

 引き続き,横尾隆氏(慈恵医大)が異種胎内分化誘導法を用いたエリスロポエチン(EPO)産生細胞の誘導について報告した。EPO産生低下によって生じる腎性貧血は腎臓病の予後不良因子であるため,その産生能の回復が期待されている。氏らは,後腎間葉組織を異種胎内に移植する動物実験で,後腎にEPO産生細胞の分化誘導を確認。臨床応用への課題として,免疫拒絶反応と異種組織を用いる生理的不快感を挙げ,アポトーシス誘導による異種組織の排除を試みたところ,排除後もEPO産生がみられたという。以上より,EPO産生組織導入法としての本法に期待を示した。

 組織幹細胞には細胞分裂の速度が遅いという共通の性質があるが,その性質を持つLabel-retaining Cells(LRCs)と呼ばれる細胞に注目し発言したのは前嶋明人氏(群馬大)。氏らは動物実験より,LRCsが腎障害後の再生過程で増殖細胞の供給源として機能し,多分化能を有することを発見。大多数の近位尿細管はLRCsの性質を備えている可能性が高いと考察した。また,今後のLRCs活性化因子の発見が腎再生医療推進の糸口になると展望を述べた。

 丸山彰一氏(名大)は,脂肪細胞由来幹細胞による腎再生について述べた。氏らは低血清培地を用い,脂肪組織から間葉系幹細胞を効率的に培養する手法を開発。本法で培養した幹細胞は,通常培養と比べ再生促成因子を多く分泌するとともに腎保護効果が高いとい...

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