医学界新聞

連載

2011.04.04

学ぼう!! 検査の使い分け
シリーズ監修 高木康(昭和大学教授医学教育推進室)
○○病だから△△検査か……,とオーダーしたあなた。その検査が最適だという自信はありますか? 同じ疾患でも,個々の症例や病態に応じ行うべき検査は異なります。適切な診断・治療のための適切な検査選択。本連載では,今日から役立つ実践的な検査使い分けの知識をお届けします。

第2回
腎機能検査

肝合成能
(アルブミン)

肝細胞傷害
(AST, ALT)

胆汁うっ滞(γ-GT)

前川真人(浜松医科大学教授 臨床検査医学)


前回からつづく

肝機能検査は,肝臓の機能や肝臓で生じる現象をとらえるための検査です。肝合成能をみるには,アルブミンのほか凝固因子(プロトロンビン時間など)やコレステロール,コリンエステラーゼなど。肝細胞傷害では,肝細胞からの逸脱酵素であるASTやALTのほか,LDや直接ビリルビン(抱合型)。また肝胆道系の閉塞を示すマーカーには,γ-GTやALP,直接ビリルビン(抱合型)といった検査があります。さらに肝臓が慢性炎症から肝硬変に進展する過程では線維化が進むことから,線維化のマーカーもあります。今回は,このような多様な肝機能検査を,どのように使い分けていけばよいか考えていきます。


病態把握にはマーカーの機序の理解が大切

 肝機能検査には,肝臓のさまざまな病態を把握するための多くのマーカーがあります。その選択基準や病態との関連をまとめたのがです。図を見ると,総ビリルビンや総胆汁酸は肝細胞の傷害・胆汁うっ滞・肝細胞の機能障害と3つの機序にまたがるマーカーとして位置付けられることがわかります。

 肝機能検査法の選択基準(文献1より)

 肝病態と肝機能検査の関連(文献1より改変)

 しかしながら,個々の検査項目における異常値は肝臓以外の臓器障害が原因となっても生じます。アルブミンはネフローゼ症候群のような尿中排泄亢進でも低下し,栄養状態の悪化でも低下します。ASTは全身の細胞に含まれ,ALTも肝細胞に特異性が高いとはいえ筋疾患でも上昇します。またビリルビンは,溶血亢進でも上昇します。

 つまり肝臓の病態を把握するためには,どの機序によって変動する検査項目に異常があるかを判定し,他の原因を排除しながら障害のタイプを鑑別することが重要です。また,そこから疾患名を考え,異常の度合いで重症度を推定していくことが大切となります。

肝機能検査を行うとき

 肝機能検査を行う目的は大別すると3つあります。1つ目は,広い意味では健診や人間ドックも含めた,肝疾患を拾い上げるためのスクリーニングです。2つ目は,肝障害の原因を探索するため。3つ目は,疾患の重症度や進展度を把握するために行われます。その際には,表の肝機能検査法の選択基準に基づく検査が推奨されます。

 特に肝疾患が疑われる症状がある場合,全身倦怠感や微熱,食欲不振といった不定愁訴のほか黄疸や尿の濃染などが認められた場合には,急性肝炎が疑われます。しかし,肝臓は沈黙の臓器と言われるほど予備力が大きいため,病態がかなり進展しないと自覚症状が現れません。したがって,臨床検査によるスクリーニングや定...

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