医学界新聞

連載

2011.01.10

「本物のホスピタリスト」をめざし米国で研鑽を積む筆者が,
その役割や実際の業務を紹介します。

REAL HOSPITALIST

[Vol.1] 病棟診療のコンダクター

石山貴章
(St. Mary's Health Center, Hospital Medicine Department/ホスピタリスト)


 2005年の8月,米国で念願の内科レジデンシーを始めたばかりの私は,プログラムディレクターとともに彼のオフィスにいた。英語力がネックでコミュニケーションに問題があり,また内科知識もまだまだ十分ではない私が,彼の厳しいフィードバックを受けるのは,むしろ当然であったろう。そんななか,彼が提案したのは次のことであった。

 「あと数か月で,新しいファカルティメンバーが1人合流する。彼は"Real Hospitalist(本物のホスピタリスト)"であり,彼から学ぶことは多いだろう。特別に彼とマンツーマンのローテーションを組むから,やってみたらどうか」

 「本物のホスピタリスト」。その言葉がのちのちまで妙に私の頭に残った。実際に彼から薫陶を受け始めるのは,この後さらに数か月先になる。しかしこれが,のちに私が師と仰ぐことになるDr. Phillip Vaidyanを知った最初のエピソードであり,また私が,のちに正式採用となる「ホスピタリストローテーション」の最初のレジデント,すなわち彼の一番弟子になることが決まった,その瞬間でもあった。

 それから数年。彼と,そして彼の説く病院内科(Hospital Medicine)の魅力にとりつかれ,私は現在ホスピタリストとして,今度はパートナーとして彼とともに働いている。「本物のホスピタリスト」とは何だろうか,といまだ自問自答しながら……。

St. Mary's Health Center。セントルイス居住エリアに位置するミッション系の病院。Dr.Vaidyan指揮のもと,ホスピタリストユニットの開設,ホスピタリストを中心に据えたレジデント教育,BOOST programへの参加など,Hospital Medicine領域において近年積極的な取り組みを行っている。

 Hospital Medicineという医学分野は,これ自体が米国でもまだ新しい。すなわち,ホスピタリスト自体も比較的新しい概念ということになる。そしてこの新分野が現在,米国で急速に伸びつつある。なぜか? そもそも,ホスピタリストとはいったい何か? 本連載の目標は,この2つの大きな課題に対し,さまざまなエピソードを交えつつ,できるだけ具体的に答えていくことである。

 本稿ではまず,「ホスピタリストとは何か?」という課題に対し,「定義」と「役割」,そして「私自身のイメージ」という3つの観点から焦点を当ててみたい。

 ホスピタリストとは1996年,WachterとGoldmanがNEJM(New England Journal of Medicine)誌の中で初めて用いた言葉である。全米のホスピタリストが集う学会であるSHM(Society of Hospital Medicine)は,ホスピタリストを,「専門職として,入院患者の総合内科管理をその主たる役割とする医師であり,その仕事範囲は,Hospital Medicineにおける患者管理,教育,リサーチ,そして...

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