MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2010.12.20
MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
道免 和久 編
《評 者》原 寛美(相澤病院総合リハビリテーションセンター・センター長)
リハ医療の場に必須の書籍
兵庫医科大学リハビリテーション(以下,リハ)医学教室教授の道免和久先生は,脳卒中上肢麻痺改善のためのCI療法をわが国に導入し,その普及に努めるなど,わが国におけるリハ医学・医療のゆるぎないオピニオンリーダーの一人であり,氏の数々の業績と活躍にはリハ医療の臨床に携わっている多くのスタッフをはじめ,リハ医療を必要としている患者さんからも高く評価されている。
その道免先生が編集した『リハビリテーション評価データブック』がこのたび発刊された。道免先生はこの著作の構想から上梓までには10年の歳月を要したとしており,今日のリハ医学・医療において汎用されている機能評価法をほぼ網羅すべく渉猟してある。その項目数は800にも及ぶが,コンパクトな辞書サイズとして編集されている労作である。
対象疾患の分野は,脳卒中・脳損傷・高次脳機能障害から始まり,循環器・呼吸器疾患などのリハ科専門医,あるいはリハスタッフの必修研修範囲をすべて含んでおり,さらに精神疾患,がん,QOL,一般検査までも網羅されている。それぞれの検査法がいかなる障害を対象としているか,そしてその評価尺度は何に分類されるか(例:順序尺度,間隔尺度など),どのような方法での評価法(例:計測,観察,質問紙など)であるか,そして構成として評価結果の数値の最大値と最小値が示されている。
また,評価法の重要度が,MEDLINEの文献ヒット数などを参考に★印5つから1つまでの5段階で表示されており,評価の優先度を鑑みるときに参考となる。さらに,その評価法のオリジナル文献と関連評価項目が記載することで,読者が該当評価法を詳しくアクセスすることを援助しており,その点でも繊細な配慮がなされていることが特徴である。その意味からも本書はリハ医療の場には必須の書籍と言える。
リハ医療のみならず,すべての医学・医療においては数値化あるいは標準化された評価法が,診断と治療効果判定には必須である。「医学の基本的方法論の一つは,"Measure something"(何かを測定せよ)である」と説き心に残っているのは,学生時代から私淑する井村裕夫先生(元京大総長)である。評価法の進化が今日の医学医療の根幹を支えているとも言える。とりわけリハ医学の診断と治療効果判定では,各種の評価方法を複数使用することが求められており,他の医学領域以上に多岐にわたる評価法が存在する。
例えば脳損傷による高次脳機能障害の診断では,簡便なMMSEや改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)では正常範囲であっても,他の複数の詳細な神経心理検査法を用いることで,初めて障害像を客観的に明らかにできる場合が多い。どのような検査法を用いるかにより,診断そのものが左右されることになる。
また今日,脳卒中上肢麻痺機能回復のための新しい治療法であるCI療法や経頭蓋磁気刺激rTMS法などを実施する場合においては,治療前後にFugl-Meyer Assessment Set,Wolf Motor Function Test,STEF,10秒テスト,Modified Ashworth Scaleなどの複数の評価方法を実施することで,治療効果判定が可能となり,その治療法が機能回復に資するものであるか否かが明らかとされる。
本書の執筆者は総勢63名に及ぶ。そこにはリハ医学・医療の発展のために,リハチームを構築し続ける編集者の強い意志の存在を伺うことができる。そのような強固な指導者の存在が,日本専門医制評価・認定機構の中で基本18領域の一つとして確固として位置付けられている"リハビリテーション科"という今日の臨床医学では欠くことのできない領域の発展のために求められていることを本書を傍らに置き実感している。
B6変・頁616 定価4,410円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00826-6


田邉 晃久 編
《評 者》早川 弘一(日医大名誉教授/四谷メディカルキューブ院長)
ノンインベイシブな検査法を最新情報まで網羅
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