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リハビリテーション評価データブック

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リハビリテーション医療の臨床で用いられる可能性のある800以上にも及ぶ機能評価法や一般検査法について、各々の概要、および正常値・異常値とその意味を解説した、“数字”にこだわったポケットサイズのデータブック。カンファレンスをしながら、あるいは研究論文を読みながら、知りたいその場ですぐに検索でき、機能評価データの読み方と理解を手助けする。
編集 道免 和久
発行 2010年03月判型:B6変頁:616
ISBN 978-4-260-00826-6
定価 4,620円 (本体4,200円+税)

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はじめに

 医療はさまざまな検査法の開発とともに発展してきた.数mlの採血を行うだけで,きわめて多くの情報量が得られる.客観的な数値データは,臨床研究を発展させ,統計学的検定から,数々のEBM(evidence-based medicine)を生む原動力となった.その結果,今や医療を受ける側も提供する側も,「検査結果」を信頼し,それに基づく治療方針を期待するようになった.
 リハビリテーション(以下リハビリ)医療の分野ではどうであろうか? 生化学データのように,検査機器によって瞬時に数百のデータを得る方法などは皆無である.ほとんどのデータは,機能評価によって,一つひとつ,療法士や医師の「目と手」で数値化しなければならない.時間も労力もかかる.また,「数字」のほとんどは順序尺度であるため,統計学的処理や解釈には慎重を要する.しかし,だからといってわれわれは機能評価を避けて通ることはできない.血圧を測定せずに降圧剤をコントロールする内科医がいないのと同様に,機能評価を実施することなくリハビリ治療を進めることはできない.
 既に数多くの機能評価がリハビリ医療現場では利用されているが,個々の施設でみれば,その数が限られているだけでなく,多職種で結果の解釈を共有するには至っていない.たとえば,カンファレンスで提示された高次脳機能障害の評価を,すべての職種が理解しているとは言い難い.また,優れた機能評価が存在するにもかかわらず,その存在が知られていない場合も多い.さらに,リハビリ医療は多面的な障害を扱うはずなのに,日常生活動作(ADL)評価だけが先行し,それだけでリハビリの治療効果全体を評価している錯覚に陥っている場合も多い.
 このような状況から,リハビリ医療の臨床で用いられる可能性があるすべての機能評価について,その概要および評価結果の数値の「意味」を知るポケットサイズのデータブックを企画した.あくまでも「数字にこだわる」というポリシーで編集したため,評価の方法については概要を掲載するのみであり,参考文献の参照が必要である.
 主な使用イメージは,すべての療法士や医師が白衣のポケットに入れて持ち歩き,カンファレンスや評価報告書に提示される他職種の評価について片手で調べる,というものである.そして,その評価法が何を評価しているのか,その数字が正常なのか異常なのか,どの程度の異常値なのかをその場で知ることができる.研究論文を読み,学会発表を聞くときも,本書を片手に持っていれば,数字の意味が明らかになる.このようにリハビリ臨床や研究のあらゆる場面において,実務の補佐役としての使用方法を期待している.
 また,すべての評価法を「網羅」することを目標にしたが,毎年数十もの評価法が新たに登場するため,現実には網羅しているとは言い難い.当初リストアップした数百の評価法に加えて,過去10年程度の主なリハビリ関連雑誌のすべての論文を精査して追加したうえで,1,000を超える評価法から重要度などをもとに取捨選択した.最終的に残った評価法のなかには,時代の変遷とともに使われなくなった評価法や,逆に近年見直されてきた評価法もある.したがって,今後も改訂ごとに項目の追加や変更が必要であろう.
 とはいえ,本書のような形態の書籍はこれまでに例がなく,十分に有用であると自信をもっている.一方,改善点や変更すべき点があれば,これをひな形に機能評価のバイブルとして育てていくべく,読者からのフィードバックを期待したい.
 本書の最終段階の編集チェック作業では,井之川真紀,大川直子,髻谷満,細見雅史,松本憲二,水口裕香子,森下慎一郎,吉田直樹の各先生方,ならびに兵庫医科大学リハビリテーション医学教室秘書の木村幸恵さん,三上圭子さんにご尽力いただいた.この場を借りて御礼申し上げたい.また,2001年に初めて本書の企画会議を開催して以来,10年近くにわたって辛抱強く執筆・編集を支えてくれた医学書院,そして,全国の数多くの仲間達に感謝したい.

 2010年2月
 道免和久

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1.脳卒中・脳損傷
2.高次脳機能障害
3.神経筋疾患
4.高齢者の疾患
5.骨関節疾患
6.脊髄損傷
7.切断
8.膠原病
9.呼吸器疾患
10.循環器疾患
11.小児の疾患
12.精神疾患
13.がん
14.熱傷
15.疾患全般
16.一般検査

 参考資料:一般検査の基準値
 評価法INDEX
 略語INDEX
 索引

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リハ医療の場に必須の書籍
書評者: 原 寛美 (相澤病院総合リハビリテーションセンター・センター長)
 兵庫医科大学リハビリテーション(以下,リハ)医学教室教授の道免和久先生は,脳卒中上肢麻痺改善のためのCI療法をわが国に導入しその普及に努めるなど,日本におけるリハ医学・医療のゆるぎないオピニオンリーダーの一人であり,氏の数々の業績と活躍にはリハ医療の臨床に携わっている多くのスタッフはじめ,リハ医療を必要としている患者さんからも高く評価されている。

 その道免先生が編集した『リハビリテーション評価データブック』がこのたび発刊された。道免先生はこの著作の構想から上梓までには10年の歳月を要したとしており,今日のリハ医学・医療において汎用されている機能評価法をほぼ網羅すべく渉猟してある。その項目数は800にも及ぶが,コンパクトな辞書サイズとして編集されている労作である。

 対象疾患の分野は,脳卒中・脳損傷,高次脳機能障害から始まり,循環器・呼吸器疾患などのリハ科専門医,あるいはリハスタッフの必修研修範囲をすべて含んでおり,さらに精神疾患,がん,QOL,一般検査までも網羅されている。それぞれの検査法がいかなる障害を対象としているか,そしてその評価尺度は何に分類されるか(例:順序尺度,間隔尺度など),どのような方法での評価法であるか(例:計測,観察,質問紙など)であるか,そして構成として評価結果の数値の最大値と最小値が示されている。

 また,評価法の重要度が,MEDLINEの文献ヒット数などを参考に★印5つから1つまでの5段階で表示されており,評価の優先度を鑑みるときに参考となる。さらに,その評価法のオリジナル文献と関連評価項目が記載されており,読者が該当評価法を詳しくアクセスすることを援助しており,その点でも繊細な配慮がなされていることが特徴である。その意味からも本書はリハ医療の場には必須の書籍といえる。

 リハ医療のみならず,すべての医学・医療においては数値化あるいは標準化された評価法が,診断と治療効果判定には必須である。「医学の基本的方法論の一つは,“Measure something”(何かを測定せよ)である」と説き心に残っているのは,学生時代から私淑する井村裕夫先生(元京大総長)である。評価法の進化が今日の医学医療の根幹を支えているとも言える。とりわけリハ医学の診断と治療効果判定では,各種の評価方法を複数使用することが求められており,他の医学領域以上に多岐にわたる評価法が存在する。

 例えば脳損傷による高次脳機能障害の診断では,簡便なMMSEや改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は正常範囲であっても,他の複数の詳細な神経心理検査法を用いることで,初めて障害像を客観的に明らかにできる場合が多い。どのような検査法を用いるかにより診断そのものが左右されることになる。

 また今日,脳卒中上肢麻痺機能回復のための新しい治療法であるCI療法や経頭蓋磁気刺激rTMS法などを実施する場合には,治療前後にFugl-Meyer Assessment Set, Wolf Motor Function Test, STEF, 10秒テスト,改訂Ashworthスケールなどの複数の評価方法を実施することで,治療効果判定が可能となり,その治療法が機能回復に資するものであるかが明らかとされる。

 本書の執筆者は総勢63名に及ぶ。そこにはリハ医学・医療の発展のために,リハチームを構築し続ける強い意志の存在を編集者にうかがうことができる。そのような強固な指導者の存在が,日本専門医制評価・認定機構の中で基本18領域の一つして確固として位置づけられている“リハビリテーション科”という今日の臨床医学では欠くことのできない領域の発展のために求められていることを本書を傍らに置き実感している。
評価法の概要と評価値の意味を手軽に参照できる一冊
書評者: 蜂須賀 研二 (産業医大教授・リハビリテーション医学)
 リハビリテーション(以下リハ)医療の現場では,取り扱う疾患が多岐にわたり,それによって生じる障害もさまざまです。そのため疾患や障害の重症度,リハ治療の計画立案,治療効果判定のためには適切な評価が重要です。毎年,おそらく数百以上の評価法が考案され発表されています。診療の際に,他の施設からの紹介状になじみのない評価法が記載されていることが時にあり,また学会に参加して知らない評価法の発表を耳にすることもまれではありません。リハ専門職種や看護師も自分の専門領域以外の評価に関しては十分な知識はありません。そこで重要なのは,これらのすべての評価法を理解し覚えておくことではなく,リハ医療の現場で遭遇した際,その評価法の概要と評価値の意味を手軽に参照できるようにしておくことです。

 兵庫医科大学リハ医学教室の道免和久教授が編集し,医学書院から出版された『リハビリテーション評価データブック』は,この医療現場のニーズをまさに満たしてくれる一冊です。このデータブックはリハ医療の現場で用いられる可能性がある800以上の機能評価や検査法を集め,それぞれの概要を簡潔に述べ,評価値の正常値と異常値やその意味する内容が記載されています。ポケットサイズの体裁なので,常に白衣のポケットに入れておき,現場で急に必要になった時に手軽に参照できることをめざしています。もう少し詳しい情報が知りたい方のためには,重要な文献や関連項目も1~2点,挙げられています。

 例えば,「Functional Ambulation Categories(FAC)」を参照すると,項目上部のボックス内に「歩行の自立度を6段階で評価」と簡潔に説明されており,「評価の対象:脳卒中,尺度:順序,構成:5(正常)~0(重度),障害:歩行,方法:観察,重要度:★★★」と必要最小限の情報が明確に示されています。つづく評価法の「概要」では,脳卒中患者などの歩行の自立度を観察して6つのカテゴリーに分類することが示されており,「評価値の意味」では点数が高いほど歩行が自立していると記載されています。さらに,重要な「文献」「関連項目」も添えられています。

 掲載されている評価法の数は十分であり,多数の執筆者が長年にわたり書き続けて完成したデータブックですが,全体的に明確な方針で統一された内容であり,リハ医療現場ですぐに役立つと確信しています。リハ医ばかりではなく,すべてのリハ医療関係者には,ぜひポケットやカバンの中に常に入れて持ち歩いていただきたい一冊です。

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