第14回川平法実技講習会開催
2010.10.25
上肢・手指の片麻痺回復へ
川平法実技講習会開催
川平法(促通反復療法,Repetitive Facilitation Exercise)は,これまで難しいとされてきた上肢・手指の麻痺の改善・促通においても高い効果があるとして,リハビリの現場で注目されている片麻痺の治療法だ。このほど,開発者の川平和美氏(鹿児島大)が執筆した書籍『片麻痺回復のための運動療法――促通反復療法「川平法」の理論と実際』の第2版が出版され,今後のさらなる普及が望まれている。
そこで,本紙では,9月19日,横浜YMCA学院専門学校(横浜市)で開かれた「第14回新しい片麻痺への促通手技(川平法)実技講習会」を取材。受講した作業療法士や,指導者の川平氏に話を聞いた。
目標の神経路を効率的に再建・強化する
セミナーではまず,川平氏による講義が行われた。神経細胞が損傷されると,通常,その細胞に代わって近傍の神経細胞の軸索から神経側芽が生じて新たな神経路を形成したり,日ごろ,興奮を伝えていなかったシナプスが興奮を伝えるようになり(アンマスキング)神経路として働いて,機能回復が生じる。ところが,この神経側芽の発生は損傷後1 か月前後がピークで,その後は減少していく。これらの新たな神経路が損傷した神経路の代役を果たせるようになるには,その神経路を実際に使用し,強化していく必要がある。
川平法は,この新しい神経路の定着を念頭に置いた治療法で,麻痺肢に伸張反射や皮膚筋反射などの刺激を正確な部位に適切なタイミングで与え,運動性下降路の再建・強化を行うものだ。
その大きな特長の一つが,「誤りなき学習」が可能なこと。例えば,共同運動がみられる患者へのリハビリを考える。共同運動とは,脳の指令が本来伝わるべき神経路以外にも伝わり,本人が意図した運動以外の運動が同時に起きてしまう現象のこと。この場合,リハビリは意図した運動の成功と失敗のなかで「試行錯誤」して進めることになる。これを避けるためには,患者がイメージした行動が適切な神経路だけを伝わり,意図した運動を生む筋肉だけに届くことが必要だ。
この選択的な興奮伝達を実現したのが「誤りなき学習」である。治療者が適切な神経路だけに興奮を伝える正確な手技を確立すると共に,「伸ばして」「曲げて」と動作ごとに指示を出し,患者自身も指示された運動を実現するよう努力することを重要視している。運動は50-100回ずつ繰り返すが,患者の負担にならないように設計されてい...
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