第15回日本緩和医療学会
2010.07.26
第15回日本緩和医療学会
第15回日本緩和医療学会が6月18-19日,東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて志真泰夫会長(筑波メディカルセンター病院)のもと開催された。創立15年目を迎える本学会は,緩和ケアの重要性が高まるとともに会員数も増え続け,今年3月には9000人を突破するなど,職種の垣根を超えて緩和ケアのあり方について議論する場となっている。今回は,「いつでもどこでも質の高い緩和ケアを」をテーマに,最新の知見が語られるとともに,より質の高い緩和ケアをめざした活発な議論が交わされた。本紙では,一般的にはまだまだ普及していない小児緩和ケアにスポットを当てたシンポジウム「小児の緩和ケア」(座長=聖路加国際病院・小澤美和氏,名大大学院・松岡真里氏)のもようを紹介する。
成人とは異なる小児の緩和医療をいかに推進するか
志真泰夫会長 |
佐々木征行氏(国立精神・神経センター病院)は,神経・筋疾患は治癒しない疾患が多いこと,徐々に進行するため一般に“ターミナル”ととらえられる期間が長期間にわたることから,「緩和ケア」という考え方は神経・筋疾患領域には浸透していないと現状を説明。しかし,今後は“できることは何でも行う医療”から,“有意義な生を全うするための医療”にシフトするために,神経・筋疾患においても緩和医療的な考え方を導入すべきではないかと述べた。
小児医療においては,何が子どもにとって最善の選択となるのか,悩む場面も多い。しかし,そもそも子どもや家族が主体的に医療に参加する環境は整っているのだろうか,自分たちがよいと思っていることを押し付けてはいないだろうか。有田直子氏(高知女子大大学院)は看護師の立場からこのような問題を提起し,小児がんの終末期ケアについて考察。看護師の役割として,患児・家族と話し合える関係を築き,寄り添いながら適切な情報提供を適切な時期に行うことや,苦痛の緩和に効果的なケア技術を医療者間,家族との間で共有することなどの重要性を説いた。
前田浩利氏(あおぞら診療所新松戸)は,1999年の診療所開設以来行ってきた,わが国ではまだ認知度の低い小児の在宅医療について紹介。重症児を地域で支えるためには,訪問診療や訪問看護だけでなく,ホームヘルパー等の生活支援・介護支援の充実,短期入院施設やデイサービス施設等のレスパイトケアの整備,ケアコーディネーターの設置など,多施設,多職種で連携していくことが不可欠であるとした。
小児の終末期医療においては,在宅で過ごしたいという家族の要望も少なくない。しかし,実際には小児患者を受け入れる診療所の不足が指摘されるなど,課題も多く山積している。そのようななか,各演者の発表後に行われた討論では,会場から「小児の在宅医療にかかわりたいと思っても,小児専門の医療施設ではない診療所等には情報提供されず,積極的にかかわることが難しい」などの声が挙がった。地域にどのようなニーズがあるのかを把握し,適切な情報提供を行うなど地域連携を強化することで,小児緩和ケア,小児在宅医療の新たなステージが開ける可能性を示唆するシンポジウムとなった。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
PT(プロトロンビン時間)―APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)(佐守友博)
連載 2011.10.10
-
事例で学ぶくすりの落とし穴
[第7回] 薬物血中濃度モニタリングのタイミング連載 2021.01.25
-
寄稿 2016.03.07
-
人工呼吸器の使いかた(2) 初期設定と人工呼吸器モード(大野博司)
連載 2010.11.08
最新の記事
-
取材記事 2024.12.11
-
連載 2024.12.11
-
対談・座談会 2024.12.10
-
循環器集中治療がもたらす新たな潮流
日本発のエビデンス創出をめざして対談・座談会 2024.12.10
-
対談・座談会 2024.12.10
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。