医学界新聞

2010.07.19

ライフサイクルの中でうつ病を考える

第7回日本うつ病学会開催


 第7回日本うつ病学会総会が,6月11-12日,長谷川雅美会長(金沢大大学院)のもと,「ライフサイクルにおけるうつ病」をテーマに,石川県立音楽堂(金沢市)にて開催された。医師以外の職種が初めて会長職を務めることとなった今回は,うつ病に携わる多様な職種に向けたプログラムが組まれ,人生のさまざまな時点で,さまざまな要因から発症するうつ病をどうとらえ,どう治療していくか,会場各所で議論が展開された。


うつ病者の「生きる力」を掘り起こす

長谷川雅美会長
 会長講演「うつ病者と語る看護」では,長谷川氏がうつ病者の「語り」の場として2006年から外来に設けている「メンタル看護相談室」での経験を通し,患者へのサポートのあり方について述べた。この相談室では,当事者が不安感や焦燥感などを看護師に語り,認知の歪みを改善することを目的としている。こうした「ナラティブアプローチ」の手法は,対象者に感情表出の機会と保障を与え,危機状況におけるセルフケアにつながるなど一定の効果が確認されているという。氏は継続的な課題として,希死念慮などの思考の繰り返し,パニック状態への対応の脆弱性などを挙げ,継続的で,かつ行動化につながり,文化や環境要因に沿ったアプローチの開発が求められていると話した。氏らは現在,オーストラリアの自殺予防研究センターの協力のもと,患者の実践行動につながる双方向の「語り」を中心としたサポート体制構築の研究を続けている。さらに,うつ病当事者グループの活動支援などを通し,うつ病者の「生きる力,生きようとする力」を引き出すアプローチの確立に尽力している。

周産期のメンタルケアに多職種の連携を

 シンポジウム「周産期を中心としたうつ病と医療のあり方」(司会=三重大・岡野禎治氏,熊本大・北村俊則氏)では,まず岡野氏が導入として,妊娠期の治療薬中断による双極性障害の再発リスクの上昇,妊娠後期の母体死因の13%が自殺・死因不明,など海外のデータや,それらに基づく取り組みを紹介。日本においても「健やか親子21」など産後うつ病の発症率減少の施策はあるものの,主軸が母親の心のケアから虐待防止に移行しつつあり,その停滞が懸念されているという。

 産婦人科医の宗田聡氏(パークサイド広尾レディスクリニック)は,レディスクリニックをメンタル面でのプ...

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