医学界新聞

2010.03.29

第25回日本静脈経腸栄養学会開催


 第25回日本静脈経腸栄養学会が2月25-26日,城谷典保会長(女子医大八千代医療センター)のもと,幕張メッセ(千葉市)他にて開催された。今回のテーマは,「未来の臨床栄養――研究の進歩と教育・臨床の標準化」。折しも2010年度診療報酬改定において「栄養サポートチーム(NST)加算」の新設が決まったところであり,NSTのさらなる発展に向け,会場は多職種の熱気に包まれた。本紙では,日本病態栄養学会との合同パネルディスカッションのもようを報告する。


合同パネルディスカッション座長の城谷典保氏(左)と河原和枝氏
 病態栄養学会と静脈経腸栄養学会の合同パネルディスカッションは昨年に続き2度目の開催。第13回病態栄養学会長の河原和枝氏(川崎医大病院)と城谷氏が座長を務め,「栄養療法における輸液から食事までの効果的なアプローチ」を主題に5人の演者が登壇した。

アルブミン偏重の栄養評価法を見直す

 「アルブミンが低いと低栄養で,高いと栄養状態はよい。これはわが国の“迷信”」。最初に登壇した中屋豊氏(徳島大)はこう切り出し,栄養評価法におけるアルブミンの意義に再考を促した。アルブミンは主に炎症や病気などの重症度を表す指標であり,アルブミンが正常でも栄養不良の患者はいる。逆に,低値でも栄養状態のよい患者も少なくない。氏は,2008年に病態栄養学会が提案したガイドラインにおいては,現在の栄養状態を表す「栄養状態の評価」と,将来栄養不良に陥る可能性が高い「栄養リスクの評価」を分けたことを紹介。アルブミンは後者の指標であり,栄養治療の妥当性を評価する指標として単独で用いるには適さないと述べた。

 鷲澤尚宏氏(東邦大)は,2006年度診療報酬改定で新設された栄養管理実施加算を「医療職すべてが栄養環境を考えるきっかけになった」と評価する一方,栄養管理上の知見が適切に伝達されていない施設が多いことを問題点として指摘。一例として,適応があるにもかかわらず,合併症が多いことを理由に中心静脈カテーテル留置を避けた結果,熱量不足となることを挙げた。さらには,各施設の事情にあわせてNSTが段階的に成長していくべきと提言。標準的な栄養療法の立案実行を一般職員の業務に移行させ,NSTは侵襲下や癌など特殊栄養療法の実行部隊へと進化していくことを求めた。

チーム医療のさらなる発展を

 栄養療法は,多職種連携と地域連携が鍵となる。管理栄養士の立場からは大部正代氏(中村学園大)が,病院や介護施設における役割を概説。管理栄養士によるベッドサイド業務の充実や,チーム医療における各職種の役割の理解と明確化を今後の課題とした。薬剤師の立場からは松原肇氏(北里大)が,チーム医療の中で“薬剤師らしさ”を発揮できる場として,無菌調製の実施および指導,輸液フィルターへの薬剤吸着回避などを挙げた。病院の在宅医療支援・推進室で地域連携に取り組む篠聡子氏(女子医大)は,在宅栄養療法の安全な継続に向け,事例も踏まえて紹介。外来時から栄養療法導入の必要性について周知を図る,緊急・急変時の支援体制を整備する,などのポイントを提示した。

 討論においては,多職種連携や役割分担を中心に議論がなされた。なお今学会では,学会認定の「栄養サポートチーム(NST)専門療法士」の受験資格として,従来の管理栄養士・看護師・薬剤師・臨床検査技師に加え,言語聴覚士・理学療法士・作業療法士・歯科衛生士の4職種の追加が決まったところである(2010年度の認定試験より適用)。“輸液から食事までの効果的なアプローチ”のため,チーム医療のさらなる発展が求められる。

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