第11回腹臥位療法推進研究会の研究と実践の報告セミナー開催
2010.02.22
次の10年に向けての課題が明確に
第11回腹臥位療法推進研究会の研究と実践の報告セミナー開催
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腹臥位療法用の寝具・枕も開発されており,そのデモンストレーションも行われた。 |
腹臥位療法は,京大医学部を卒業後,米国マウント・サイナイ医科大学で老年内科を学んだ故並河正晃氏が帰国後日本の超高齢社会の到来を見越し,寝たきり廃用症候を予防・軽減・治癒させる方法としてそのメカニズムを解明し,有効性を提唱したことで知られている。自らうつぶせ寝を実践し,その効用を実感していた日野原重明氏(聖路加国際病院)がこの考え方に共鳴。同療法に早くから着目し,その有効性を看護の立場から実証しようとしていた川島みどり氏(日赤看護大),フランスで神経内科学・リハビリテーションを学び,有働式腹臥位療法を実践していた有働尚子氏の協力を得て,並河氏の遺志を実践・研究で発展させるために設立されたのが「腹臥位療法推進研究会」である。
さらに,中心メンバーとして,急性呼吸不全がもたらす下側肺障害への臨床応用を日本でいち早く進めていた丸川征四郎氏(医誠会病院,前兵庫医大救急・災害医学),神経難病への応用で成果を挙げている安間文彦氏(国立病院機構鈴鹿病院)らも加わり,研究会で扱うテーマもこの10年で厚みを増してきている。特に急性出血性直腸潰瘍における同療法の有効性を示唆した新知見は,この研究会の成果と言える。
11回目の報告セミナーでは,この10年の積み重ねを振り返るとともに,今後どのような実践や研究を進めていけばよいのかを中心に議論するプログラムが組まれた。並河氏による10項目の腹臥位療法の効用のうち,「便秘の予防と改善」「尿便失禁の防止」「認知障害の改善」「全身的改善」は,経験的には認められるものの,まだ科学的には証明されてはいない。疾患,年齢,症状といった被検者側の要素に加え,体位の取り方,持続時間,インターバルをどうするかなど,介入側の条件も併せるとあまりにも変数が多いために,有効性の証明には困難が伴う。次の10年に向けて確かな研究成果が得られるようなプロトコルづくりなどの課題が明らかになった。次回は2010年12月11日,同じ会場で開催される。
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