うつ症状の光トポグラフィー検査(福田正人)
寄稿
2010.02.15
【寄稿】
うつ症状の光トポグラフィー検査
福田正人(群馬大学大学院医学系研究科 神経精神医学教室・准教授)
先進医療「うつ症状の光トポグラフィー検査」
先進医療とは,高度な医療技術を研究と診療の中間として位置付け保険収載について検討する制度で,2009年末時点で120種類の技術が指定されている。この先進医療のひとつとして,「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」が2009年4月に精神医療分野として初めての承認を受けた。保険診療と併用でき,検査料は1万3000円程度である。
図1 NIRS検査装置と検査風景 |
三大疾患としての精神疾患
精神疾患は予想以上に多い疾患である。米国では,一般人口における1年有病率として26.2%,生涯有病率として46.4%という報告がある。医療機関を受診する患者はその一部にすぎないが,日本においても厚生労働省の患者調査での受診患者数は100万人(1984年),149万人(1990年),188万人(1996年),258万人(2002年),326万人(2005年)と6年ごとに約50万人ずつ増加を続けている。
WHO(世界保健機関)などが政策の優先度を考えるための疾患の総合的な指標として用いている障害調整生命年(disability-adjusted life year;DALY)〔=病気により失う命の年数(years of life lost;YLL)+病気に基づく障害の年数換算(years lived with disability; YLD)〕では,精神疾患は,がん・循環器疾患と並ぶ三大疾患のひとつとされている。精神疾患が生活障害の原因となるためである。さらに,日本の死亡原因第6位で,国民40人に1人の死因となっている自殺の背景にも,多くの場合に精神疾患がある1)。
臨床検査がないことによる困難
こうした精神疾患の診断は,臨床症状と病歴に基づいて行われており,精神疾患の診断に有用な臨床検査は現在のところ実用化されていない。そのため,一般外来を受診する患者における精神疾患についての内科医と精神科医の診断一致率は19.3%に過ぎず,患者5人のうち4人は見逃されるか誤診されているという報告がある(WHO調査)。
身体疾患においては,高血圧における血圧や糖尿病についての血糖値などのように,疾患を全体として反映す...
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