医学界新聞

2009.11.16

第47回日本癌治療学会開催

医療者,患者,行政が目線をそろえ,がん治療を考える


 第47回日本癌治療学会が杉山徹会長(岩手医大)のもと,10月22-24日にパシフィコ横浜(横浜市)にて開催された。「がん治療への目線――Perspectives of Clinical Oncology」をテーマに,医療者だけにとどまらず患者・家族,行政,企業それぞれの目線からみた「がん治療の現状と変化」について活発な議論が交わされた。特に「患者の目線」として活動の拠点となる「Patient Advocate Lounge」を学会場に設け,50人の患者代表が参加するなど患者との連携を重視,さらに患者代表がシンポジウムの演者として登壇するなど画期的な試みが行われた。本紙では,会長講演ならびにがん対策特別シンポジウムとサイコオンコロジーの講演のもようを報告する。


見過ごされた卵巣がんに挑む

杉山徹会長
 会長講演「難治性卵巣がん治療への挑戦」では,杉山氏が取り組んできた難治性卵巣がん治療のための臨床研究について,最新の知見を含め報告した。卵巣がんは,病理学的には漿液性腺がん,類内膜腺がん,明細胞腺がん,粘液性腺がんに分類されるが,氏らはこのうち明細胞腺がんと粘液性腺がんが化学療法抵抗性であり予後が悪いことを発見。この2つの組織型は欧米ではまれであり臨床研究が進んでこなかったことから,氏らは国際的な議論を展開し,JGOG(婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構)を国際共同試験の受け皿として整備,そして医師主導治験を開始したことを報告した。また,明細胞腺がんは分子生物学的には腎細胞がんや大腸がんなどと似ていることから,より良い治療法開発にはこれらのがんに学ぶことが重要と述べた。

地域がん医療の現状と課題

 「がん対策基本法」が2007年から施行され3年目を迎えたいま,がん診療はどのような現状にあるのか。特別企画シンポジウム「がん対策基本法に基づくがん医療は変わったか? 2年間を振り返る」では,その成果を含めたがん診療の現状をさまざまな立場の演者が報告した。 

 拠点病院の立場からは,佐々木常雄氏(都立駒込病院)が登壇。「東京都がん対策推進計画」に基づく東京都の24の病院で作る部会の活動を紹介し,今後の課題として個人情報保護法が壁となっている予後調査の実施方法や,緩和ケア研修のさらなる充実を挙げた。

 都道府県におけるがん対策として,引き続き2氏が登壇。村下伯氏(島根県隠岐保健所)は,島根県の特徴としてがん対策委員15人のうち4人が患者代表であることを挙げ,その結果,「島根県がん対策推進計画」にがん患者団体や関係者の意見を最大限に取り入れることができたと報告した。また,これからは患者・医療機関・企業・マスコミ・行政・議会・教育機関が一体となった「七位一体」のがん対策が重要であると提言した。若林剛氏(岩手医大)は,岩手県のがん対策として岩手医大を中心とした活動を報告。患者目線の情...

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