医学界新聞

2009.11.02

第17回日本消化器関連学会週間開催

学会の垣根を越え,消化器病学の進歩を楽しむ


 第17回日本消化器関連学会週間(JDDW2009)が千葉勉運営委員長(京大)のもと,10月13-16日に国立京都国際会館(京都市)にて開催された。日本消化器関連学会週間は,日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会,日本肝臓学会,日本消化器がん検診学会,日本消化吸収学会の5学会が合同で開催する,国内最大級の学術集会だ。8年ぶりに京都で開催された本学会では,消化器の全域を漏れなくカバーする24題のシンポジウム,27題のパネルディスカッション,27題のワークショップと充実した演題が並んだ。本紙ではH. pylori除菌と膵癌診療に関するプログラムのもようを報告する。


胃癌の撲滅をめざして

千葉勉運営委員長
 Helicobacter pylori感染が胃発癌の主要な原因であることが判明してから,H. pylori除菌の重要性はますます高まっている。一方,わが国のH. pylori感染率は50代以上では7割を超えるが,H. pylori除菌療法は胃潰瘍または十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者のみにしか保険適用されず,その普及が課題となっている。シンポジウム「胃癌対策としてのH. pylori除菌」(司会=大分大・藤岡利生氏,北大・浅香正博氏)では,H. pyloriの除菌を医療にどう取り入れていくか,8人の演者が報告した。

 まず,胃癌の基礎研究者の立場から2氏が登壇。野崎浩二氏(東大)は,胃癌の前駆病変である胃の壁細胞喪失に着目し,その細胞系統の変化から分泌因子HE4発現の上昇を見いだしたと報告した。遺伝子HE4は胃癌や腸上皮化生にも強く発現することから,ハイリスクグループを絞り込むマーカーとなる可能性を示した。また,渡二郎氏(兵庫医大)は,H. pylori除菌後に発生する胃癌について,Das-1反応性が高危険群予測のためのマーカーとなるとの見解を示した。

 引き続き,臨床面からみた胃癌対策を3氏が報告。このなかで,間部克裕氏(KKR札幌医療センター)は「山形県臨床ヘリコバクター・ピロリ研究会」による研究を紹介し,早期の除菌が有効であること,若年者へのスクリーニングと除菌,また胃・十二指腸潰瘍および内視鏡手術後患者への除菌の推進が必要であり,効率的な胃癌検診で予防を行うことが重要と主張した。

 H. pylori感染者の除菌に取り組む施設からは3氏が登壇した。

 加藤元嗣氏(北大)は,開設後6か月が経過した同大の「ピロリ菌専門外来」について,受診者の動向や成績を報告した。今後の課題として,ピロリ菌外来の普及ならびに適切な診察料の設定,そして1次除菌の成功率が8割前後にとどまることから除菌方法の改善を挙げた。

 中島滋美氏(社会保険滋賀病院)は,同院で開催している「ピロリ菌・胃癌予防講習会」を紹介した。同院では,講習会で除菌のメリットとデメ...

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