未来の地域医療を担う家庭医療専門医
2009.10.12
――ジェネラリストの進む道
未来の地域医療を担う家庭医療専門医
地域医療の「崩壊」が社会問題として取りざたされる昨今,地域医療再生のカギとなる“ジェネラリスト”に注目が集まっている。しかしながら,わが国でのプライマリ・ケア領域の専門的な研修プログラムの整備は遅れ,専門医もこれまではほとんどいなかったのが現状だ。一方,厚労省「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」からは家庭医・総合医の重要性が提言され,国民から信頼される「専門医」としてのジェネラリストの養成は急務となっている。
そのようななか,2009年7月20日に日本家庭医療学会認定家庭医療専門医(以下,家庭医療専門医)の認定審査が行われ,わが国でも本格的なジェネラリスト教育を受けた14人の専門医が誕生した。家庭医療の専門家としての新たな道が開かれたいま,合格者たちは何を思うのか。新たに誕生した専門医を取材した。
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14人の新たな専門医の誕生
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認定審査はポートフォリオと試験により行われた。そのうち論述試験(Modified Essay Question)と臨床能力評価試験(Clinical Skills Assessment)から成る試験は,日本プライマリ・ケア学会,日本総合診療医学会との3学会合同で行われ,日本プライマリ・ケア学会で9年間行われてきた専門医試験に準じた形式で専門医としての能力を審査するという。そしてこのたび,その合格者となる14人の本格的なプライマリ・ケア領域の研修を受けた専門医が誕生した。
赤ひげ先生をめざして
「病気だけでなく患者さんやご家族の人生にかかわることができること,また,慣れ親しんだ地域で患者さんの心からの笑顔を見ることができることが家庭医のやりがい」と語るのは横林賢一氏(北部東京家庭医療学センター)だ。氏は,医学生のころから自らの医師像として「赤ひげ先生」のような町医者をイメージし,卒後,研修を行うなかで本当にやりたい医療は家庭医療だということを知り家庭医をめざしたという。また,将来の目標として,家庭医として医療,福祉,教育,行政,環境,社会貢献(NPO, NGO),さらには企業なども融合した真に住みよい街づくりの実践に取り組みたいと語った。地域とともにある家庭医ならではの目標だ。
また,櫛笥永晴氏(川崎市立多摩病院)は「患者さんからいつも頼ってもらえる部分はもちろん,地域の方の予防にもかかわれるところに家庭医としての大変さとやりがいを感じる」と語る。臓器別の専門家となった場合,どうしても既に進行した疾患を通じての患者との付き合いとなるが,家庭医は疾患の発生から患者をフォローすることができる部分も,その大きな魅力のようだ。
今回,話をうかがった専門医の多くが,今後の目標として家庭医療を担う専門医の数を増やす活動に取り組みたいと語る。専門医が誕生したとはいえ,まだ,わずかに14人。日本に家庭医療が本当に根付いていくかは,これからの専門医養成に拠るところが大きい。これまではなかなか見えてこなかった家庭医のロールモデルだが,今回誕生した家庭医療専門医がこれからのジェネラリストをめざす医学生・研修医の目標となっていくだろう。
2009年プライマリ・ケア関連学会連合学術会議で,日本家庭医療学会・日本プライマリ・ケア学会・日本総合診療医学会の3学会の2010年4月の統合が決議された。ジェネラリストの養成も新たな時代に突入するなか,日本の地域医療の将来を担う家庭医療専門医に期待が集まっている。
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