医学界新聞

2009.08.31

第5回クリニカルパス教育セミナー開催


 第5回クリニカルパス教育セミナー「そこが知りたい! 地域連携パスの最前線」(主催=日本クリニカルパス学会・医学書院)が,6月27日に大阪(御堂会館),8月1日に東京(日本教育会館一ツ橋ホール)にて開催された。本紙では,東京会場(司会=黒部市民病院・今田光一氏,北美原クリニック・岡田晋吾氏)のもようをお伝えする。

 病院の機能分化が進むなか,患者が必要なときに必要な医療・看護を切れ目なく受けることのできる体制の整備が急務となっている。その方策の一つとして導入が進んでいるのが地域連携パスだ。セミナーでは,はじめに副島秀久氏(済生会熊本病院)が,医療の標準化を図り,質向上をめざすためにクリニカルパスが果たす役割について言及。さらに,パスの改善のプロセスにおけるバリアンス分析の重要性を説いた。

 次に今野美雪氏(山形県立中央病院)が,近年医療が「治す医療」から「支える医療」へとパラダイムシフトしている点を指摘。また,良好なチーム医療を担保するために,患者にとって一番身近な医療者である看護師が,患者・家族と医療者,医療者同士をつなぐ橋渡し役として,フレキシブルに対応できる能力を養う必要性があると述べた。

 長島敦氏(済生会横浜市東部病院)は,胃大腸がん術後地域連携パスを提示。パスの作成に当たっては,連携先の視点に立って実用性を最優先し,地域の医師会と合同で作成したという。また,簡易な運用を可能にするために,導入時期や適用患者の選択を的確に行う必要性を説いた。今後の課題は調剤薬局へのパスの導入だが,現在は個別に対応しているという。

 朝比奈靖浩氏(武蔵野赤十字病院)は,肝がん撲滅をめざした地域医療の展開について紹介。精査・治療方針の決定・治療等を担う急性期病院,インターフェロン導入後や肝がん治療後の入院管理を担う病院,肝炎検診や肝がんスクリーニング・維持療法を行うかかりつけ医,そして自治体の四者がそれぞれの役割を果たす上で,クリニカルパスが有効に機能していることを示した。

 最後に堀江健夫氏(前橋赤十字病院)が,わが国における気管支喘息による死亡の実態を報告。その上で,医療機関へのアクセスの遅れ,治療不足,長期治療に対してのアドヒアランスの低さなど,喘息死の背景にある問題を克服し,喘息死ゼロをめざして導入した地域連携パスの成功例を紹介した。

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