医学界新聞

連載

2009.08.24

腫瘍外科医・あしの院長の
地域とともに歩む医療

〔 第11回 〕
地域緩和ケア支援ネットワーク(2)
医療支援システム

蘆野吉和(十和田市立中央病院長)

腫瘍外科医として看護・介護と連携しながら20年にわたり在宅ホスピスを手がけてきた異色の病院長が綴る,
「がん医療」「緩和ケア」「医療を軸に地域をつくる試み」


前回よりつづく

 地域緩和ケア支援ネットワークの医療支援システムは,“黒子”としてネットワークを支えます。このシステムを支えるチームには,医師,看護師,薬剤師を含め,医療に関係する多職種が参加しますが,最も重要な役割を果たしているのが訪問看護師です。

 訪問看護師の役割は,病状の観察,苦痛症状の評価,症状緩和治療の効果の評価,約束指示に基づく治療の実施,医療機器の管理と家族への指導,家族に対する看護および介護の指導,清拭,看取りの指導などのほか,医師と患者家族との橋渡しなど多岐にわたります。有能な訪問看護師が対応することで,患者や家族そして医師も不安なく毎日を送ることができるわけですが,このような訪問看護師の役割や重要性に私が初めて気付いたのは1996年7月ごろです。

 同年4月に前任地の福島労災病院に訪問看護室が開設され,専従の訪問看護師3名が在宅の現場に赴き始めて3か月後のことです。それまで約9年間,私一人で在宅ホスピスケアを行い,自宅での症状緩和治療の知識や技能を高めていましたが,その知識や技能を訪問看護師が短期間で覚えたことで,医師としての私の業務がかなり軽減されました。また,訪問看護師から報告される患者や家族のさまざまな情報(病状に対する不安,家庭の問題,経済的な問題など)は,私自身に...

この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook