医学界新聞

連載

2009.01.12

レジデントのための
Evidence Based Clinical Practice

【第1回】喘息患者へのアプローチ

谷口俊文
(ワシントン大学感染症フェロー)


 このシリーズでは内科の基本疾患を管理する上での重要なティーチング・ポイントをエビデンスに基づいて解説していきたいと思います。臨床判断の根拠の裏を取るという姿勢に重点を置き,入院後の管理,および外来につなげるための管理の仕方を中心に話を進めます。この記事からさらに詳しく読むためのFurther Readingでは,重要論文を紹介します。


■Case

 25歳の女性。喘息の既往あり。週に1-2回は喘息の増悪で夜起きてしまうという。その度にメプチン®を吸入してきた。今日は明け方から息苦しさが増悪したために救急外来を受診。救急外来で治療するも改善が思わしくなく入院となる。

Clinical Discussion

 ここでは喘息の診断がついた患者で救急にて急性期の治療を受け,入院となった症例を取り上げている。喘息の患者を受け持つときに研修医がついつい忘れてしまうのが,喘息の重症度を決めるフォーカスを絞った問診である。日中に発作はあるか,夜間寝ている間の発作はあるかなど細かな問診が患者の長期治療戦略に大きく関係してくることは見落としがちだ。そのほか,何が誘発因子だったのか,アレルゲンへの曝露,感染症の有無,ピークフロー,肺機能検査の有無,救急外来での治療,なども重要なポイントである。

マネジメントの基本

急性期の治療の基本
 基本はβ2刺激薬(ベネトリン®)吸入,そしてステロイドの投与である。経口のステロイドでも点滴によるステロイドでも差はあまりないという臨床研究(JAMA1988;260:527)があるが,頻用されているのはメチルプレドニゾロンの点滴静注である(重症ならば点滴静注を選ぶと思うが,エビデンスはなし)。

 その他,イプラトロピウムなどの抗コリン薬の使用も重要である(Chest2002;121:1977)。経過が思わしくない場合はマグネシウムの点滴(2g静注20分かけて投与)(Chest2002;122:489, Lancet2003;361:2114)。重症時にはエピネフリンの皮下注も考慮する。

テオフィリン製剤の役割
 テオフィリン製剤に関しては明確なエビデンスがない。うまく当たれば治療効果が認められるという患者も実は少なくないのだが,他の薬剤との相互作用(特に急性増悪時の抗菌薬との相互作用は無視できない),血中濃度が治療域を超えてしまったときの毒性などを考えると使いづらい印象を受ける(テオフィリンの有効性はNEJM1997;337:1412やEur Respir J.1997;10:2754などを参照)。

 明確なエビデンスによりサポートされていないことから,米国における臨床の現場でテオフィリン製剤が喘息の急性期や新規に診断された喘息患者に処方されるところは,私個人としてみたことがない。

慢性期の治療の基本
 急性期を越した際に何が重要になるかというと,急性増悪の予防のための教育とコントローラーの組み立てである。これにはまず患者の重症度を決定しなければならない。米国のNHLBI Expert Panel Reportと国際ガイドラインGINA2006(Global Initiative For Asthma)から出ている分類がある。ウェブサイトでガイドラインを無料公開しているので参照してみるとよい((2)(3))。

 ここでは米国式(NHLBI Expert Panel Report)を紹介することとしよう。表は問診に

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