医学界新聞

2008.12.01

聖ルカ臨床教育研究セミナー開催


 「聖ルカ臨床教育研究セミナー――医学教育の新しい潮流」が10月19日,虎ノ門パストラルホテル(東京都港区)にて開催された。刻々と進化する医学に対応していく医学者・医療者の育成に向け,海外の4人の医学教育者が講演した。今まさにさまざまな模索が行われている領域だけに,多様な切り口からの方法論が示された。

 医学・医療の変化に対応した講義内容の改善・カリキュラム変更でアプローチするのは,リー・ゴールドマン氏(コロンビア大;左写真)。氏は,医学の知識は日々更新され,身につけた知識をupdateしていく必要があるとして,新しい知識の入手法と得られた知識の統合法,そしてそれらを批判的に評価する方法を養うための,電子リソースを用いた教育を紹介した。また,重要な症例は外来で多くみられるとし,外来,そして外来と入院との連携に焦点を当てた実習の必要性を唱えた。

 新たな医学教育の真髄を実習に見出すのは,チャールズ・へイタム氏(ハーバード大;右写真)である。氏はまず,成人学習者の特質を,目標志向性が高く,現場との接触や,実体験を経て知識を習得する点などであるとした。さらに,講義は必要最小限にし,講義の内容を実体験できる豊富な実習機会を設けることを訴えた。加えて,学習者が「わからない」と気兼ねなく言うことができ,指導者と学習者の間で双方向の議論・質問が交わされる実習環境の整備を提唱した。

 ロバート・カメイ氏(デューク・シンガポール大)は,学生の知的好奇心を最大限に活かしたチーム基盤型学習(PBL)を展開している。PBLでは指導者は最小限の講義にとどめ,学習者がグループワークの中でディスカッションする。その中で,自分の考えを表明する力を養い,好奇心に基づく疑問点解消型の学習を通して,個々の知識を関連づけていく方向性を示した。

 ジョシュア・ジェイコブス氏(聖ルカ・ライフサイエンス研究所)は,日米の医学教育を比較して,日本の医学教育の改善点を指摘。その中で氏は,「受療者である国民の声を含んだ政府,医療機関などすべての関係者が医学教育の目標設定にかかわること」,「定めた目標に応じた過不足のない人員・資源の配分をすること」,「教育効果を評価する方法を確立し,指導者側が用いる学習達成度の評価だけでなく,患者の評価(患者満足度)も視野に入れること」が日本の医学教育の課題であるとした。

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