MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2008.10.06
MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


臨床医のための症例プレゼンテーション A to Z
[英語CD付]
齋藤 中哉 著
Alan T. Lefor 編集協力
《評 者》日野原 重明(聖路加国際病院名誉院長・理事長)
世界標準の症例プレゼンテーション技術を理論から学べるテキスト
このたび,自治医科大学客員教授であり東京医科大学の総合診療科教授でもある齋藤中哉教授の執筆と,自治医科大学教授のAlan T. Lefor教授の編集協力により,『臨床医のための症例プレゼンテーションA to Z』が医学書院から出版された。これには英語のCDが付いている。
本書の内容は,2003年以来,ハワイ大学の医学教育フェローシップ・プログラム・ディレクターをされていた齋藤中哉氏が『週刊医学界新聞』誌上において2004年から1年間,12回にわたって連載した「英語で発信! 臨床症例提示――今こそ世界の潮流に乗ろう」に,大幅な加筆・修正を加えたものだ。連載は,カンファレンスにおける症例提示(Case Presentation)の実例を分析し,テキストとして教育的,効率的な症例の提供の仕方を教えてくれる,読者にあたかも米国での症例検討会に出席しているような感を与える記事であった。
私は,日米の臨床医学にあるレベル差の大きな原因のひとつは,米国でみるような効率的なカンファレンス進行の技が日本にないことにあると考えてきた。だから,本書が出版されたことの意義は大きいと思う。しかも,本書では症例提示の日本語の例文の多くが英文に訳され,CDに収録されているため,これを聞くと,まるでアメリカの医学教育機関でカンファレンスに出席しているような臨場感を持つのである。
章を追って内容を示すと,第1章は症例の提示の技に必要な基本的な点が取り上げられている。第2章には症例を提供する上での理論が述べられ,主訴の取り上げ方,次いで現病歴,既往歴,家族歴,生活歴をとる要領が示されている。次に診察の順序として,診察の技法,検査結果の取り上げ方,最後に要約の書き方が示されている。またPOSによるプロブレム・リストとそのアセスメントと治療検査のプランの書き方が示されている。
続いて,病歴診察所見や検査成績を口述する速度や発音,音調の取り方,そのときの視線の向け方や姿勢や身振りについて,さらに差別用語を使わない注意が述べられている。
以降の章は,より具体的な実践について述べている。例えば第3章には,症例提示の技やコツが分類して述べられており,第4章には症例提示の練習法やスライドの使い方が述べられている。第5章には症例提示の指導上の7つのポイントが述べられており,第6章には英語での口述の仕方や要領が述べられている。
以上のように本書は,症例提示の理論から実践までが万遍なく述べられているが,表現は平易で,指導医と会話しているようなムードで読むことができ,内容を納得して自己訓練すれば,症例提示能力,ひいては臨床的実力が高くなる爽快感が体験されるのである。
本書が生きたテキストとして医学生,研修医はもちろん,ナースやコメディカルにもよき学習書となることを信じて疑わないものである。
B5・頁248 定価3,990円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00278-3


光島 徹,田辺 聡 監修
松本 雄三,木下 千万子 編
《評 者》赤松 泰次(信州大学医学部附属病院内視鏡診療部)
消化器内視鏡「オールインワン」の指南書
内視鏡室は,医師,看護師,内視鏡技師,臨床工学技士,医療事務など,さまざまな職種のスタッフの協力によって運営されている。本書は主に内視鏡室に勤務するコメディカルスタッフを対象に発刊され,執筆者も医師だけでなく内視鏡の現場を熟知したベテランのコメディカルの方々が随所に担当しており,従来の医師主導のマニュアル本とは一線を画す秀書である。内容は極めて実践的かつ具体的に分かりやすく解説されている。内視鏡室で勤務を始めて日が浅いコメディカルスタッフが消化器内視鏡全般にわたる知識を身につけるためだけでなく,ある程度内視鏡室での勤務経験があるコメディカルスタッフにとっても,より専門的な知識の習得とスキルアップのために役立つと思われる。
I章は「安全で快適な内視鏡を提供するために」と題して,内視鏡機器の管理や内視鏡室で取り扱う備品や薬品の説明の他,医療スタッフの連携やリスクマネジメントについて解説され,II章は「受診者が満足する内視鏡検査を提供するために」と題して,内視鏡検査の概要や介助のコツ,患者への配慮や観察のポイントなどが記載されている。Ⅲ章は「確実な内視鏡治療を援助するために」,Ⅳ章は「救命救急のために」と題して,さまざまな内視鏡治療の概要と使用する処置具の解説および介助のコツが述べられている。さらにⅤ章は「保険について」と題して,内視鏡スタッフが知っておくべき保険点数が一覧表にしてまとめられている。
このように本書は,消化器内視鏡に携わるコメディカルスタッフにとって必要不可欠な知識がすべて網羅された「オールインワン」の指南書であり,すべての内視鏡室にぜひ1冊備えることを勧めたい。医師とコメディカルスタッフがそれぞれ共にレベルアップを図っていくことが,より安全で有益な内視鏡診療につながるものと確信する。
B5・頁328 定価4,620円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00397-1


伊藤 真美,土本 亜理子 編
《評 者》山崎 章郎(ケアタウン小平クリニック)
「緩和ケア」の不条理に取り組む5人の侍
いささか意表を突かれた本であった。書名から伝わってくる第一印象は,誠実に地域の有床診療所で緩和医療に取り組んでいる人々からの,真摯な問題提起が詰まった本なのではないか,つまり,よく理解できるけれども,問題の重さゆえに,読むほうの気分も重くなってしまうような本なのではないか,ということだったからである。そう覚悟して読んでみた。
しかし,まず筆者が一読して感じたことは,この本は面白いということであった。有床診療所という入院施設でもあるのに,病院や緩和ケア病棟とはかけ離れて安い,まるで格安ビジネスホテルか民宿並みの入院費しか認められていない医療施設で...
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