医学界新聞

2008.09.01



第5回日本うつ病学会開催


 第5回日本うつ病学会が神庭重信会長(九大)のもと,7月25-26日の2日間にわたりアクロス福岡(福岡市)において開催された。今回のメインテーマは「現代のうつ病――病理の多様性,予防・治療の多様性」とされ,本学会設立の目的のひとつでもある多職種連携を基盤とするうつ病治療のより一層の進展を目指し,医師・コメディカルなどさまざまな立場からの新しい病態に関する討論,職場復帰プログラムに関するワークショップ,また臨床の達人として多くの精神科医から信奉を集める神田橋條治氏(伊敷病院)による招待講演など多彩な演題が企画された。


 わが国におけるうつ病患者の総数は90万人を超え,この20年間で10倍に増加している。患者数の増加に加え,社会構造など環境因子の変化に伴い,うつ病の病像が複雑・多様化し,“これこそがうつ病である”というプロトタイプが持ちづらくなっている現在,診療現場が混乱を来たしているというのが実情ではないか。

 本紙ではこの状況からのブレイクスルーを期して企画されたシンポジウム「うつ病の多様性への治療戦略」のもようを報告する。

うつ病の多様性への治療戦略

 はじめに内海健氏(帝京大)から,現在までの病態・治療法の変遷について整理が行われた。氏はうつ病治療が難しくなっている要因について「かつて患者の大多数を占めたメランコリー性格や執着気質に代表される“中間形質”というマーカーが見えなくなっている」「症状がかつてほど鮮明でない」「双極性がびまん性に出現する」との3点を指摘。また操作的診断の影響もあり,症状を羅列的に並べることに終始しがちであるが,まずは器質性疾患や統合失調症などその他の疾患との鑑別をしっかりと行ったうえで,“本物のうつ病”を見逃さないための診断を進める必要性を強く説いた。

診断が難しい症例の増加

 内海氏も提示したが,現代型のうつ病(気分障害)は「スペクトラム」概念に象徴されるように非常に多様化しており,DSMにおけるⅡ軸診断との関連も含めて,そ...

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