医学界新聞

2008.05.19

 マスと個に対応する内科学
第105回日本内科学会開催


 第105回日本内科学会が4月11-13日,藤田敏郎会頭(東大)のもと,東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて開催された。「マスと個に対応する内科学」をメインテーマとした今回は,個々の疾患に関する最新の知見とともに,2008年度診療報酬改定で重点的に評価する項目に挙げられたがん医療や,この4月に開始された特定健診・特定保健指導で本格的に取り組まれることになったメタボリックシンドロームなど,集団(マス)への関わりを視野に入れた今日的話題が並んだ。本紙では,その一部を紹介する。


高血圧治療の現在

 会頭講演「マスと個に対応する内科学――高血圧の病態と治療」で藤田氏は,全国民の4分の1が抱えているといわれる高血圧について,研究成果を基に報告した。高血圧は心血管疾患発症の最大のリスク因子とされ,高齢者の増加や肥満による代謝性疾患の増加などの問題を抱えているわが国においては喫緊の課題となっている。

 しかしながら,高血圧罹患の原因とされる食塩摂取量の減少は遅々として進まず,いまだ「健康日本21」の目標である10g/日を切ることができていない。それに加え,食事の欧米化による脂肪摂取の増加,過食,運動不足などの生活習慣上の問題がさらに追い打ちをかけている。藤田氏はこうした現状の課題を挙げたうえで,高血圧の病態と治療法について述べた。

 日常診療で遭遇する高血圧の多くは原因のわからない本態性高血圧である。その発症においては,遺伝因子と環境因子が非常に重要なファクターであると考えられている。中でも,食塩負荷により血圧が非常に上昇する食塩感受性高血圧の存在が注目されており,それらの環境因子感受性遺伝子の全容を解明することで,多因子疾患におけるテーラーメード医療の幕開けになりうると述べた。

 食塩感受性高血圧においては,食塩過剰摂取により酸化ストレスの過剰産生が生じるが,この酸化ストレスが食塩感受性とメタボリックシンドロームをつなぐキーファクターとなっている可能性を示唆。これを改善するには,抗酸化作用を持つカリウムを多く含む野菜・果物の積極的摂取など,生活習慣を見直す必要があると指摘した。

 さらに,メタボリックシンドロームにおける食塩感受性高血圧の発症メカニズムについて,最近の研究成果を紹介。食塩感受性高血圧には遺伝子因子をはじめ複数の因子が関与しており,環境因子には食塩だけでなく,肥満や精神的ストレス,加齢なども含まれることを明らかにした。

 今後の高血圧治療については,重症度の高いハイリスク群(High risk strategy)に対して個々の病態に合った適切な治療を行うだけでなく,集団全体の心血管疾患発症リスクを抑えるために,集団(Population strategy)に対する減塩などの非薬物療法を行うことの重要性を強調した。

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