MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2008.03.24
MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


草間 朋子 編
《評 者》明石 真言(放医研緊急被ばく医療研究センター長)
親しみがわく構成で伝える安全な放射線利用の知識
現代の医療を放射線抜きで語ることはできない。また「患者が受ける線量(医療被ばく線量)に対して,上限値が決められていない」。つまり,医療では放射線が“正義の味方”として利用されている以上,使用する医療スタッフの放射線被ばくに関する責任は大きい。ところが医師や看護師・保健師で,学生時代に放射線の影響に関してある程度系統的な教育を受けた覚えがある人はほとんどいないような気がする。
医療以外にも「身の回りの製品・技術」「研究用」「工業領域」など広く放射線は利用されている。評者は被ばく医療に関わっており,看護師等の教育の場で「あなたが働いている医療施設に,被ばくもしくは汚染された患者が来たらどうしますか?」という質問をよくする。本書は医療現場で働く看護師のみならず,医師にも放射線被ばくに関する知識を与えてくれる。もちろん私の質問に答えるのに十分なことは言うまでもない。つまり本来学校で習うべき基本的なことを学べるのである。
「自然界同様われわれの体内にも,γ線を出す40Kがあること」等身近な例もあり,さらに図表の多さから親しみがわく構成になっている。医療施設で働く看護師として必要な知識も,患者への適切なアドバイスに留まらない。
放射線の胎児および遺伝的影響,女性の放射線作業従事者の放射線防護,医療現場での放射線防護の実際など,看護職自身にも関わるかもしれない問題にも情報が与えられる。ポータブルX線装置による撮影時,「照射野の中心から2mも離れれば,線量は無視できるほど小さい」も重要な知識であるし,また核医学治療を受ける患者のケアに際して「医療従事者はX線診療の際に使用する防護エプロンなどは使用しない」のは,γ線には防護エプロンの防護効果は小さく「防護三原則」に則りケアを行うべきだからだ,ももっともである。
医療における放射線利用は,診療科を問わない。医療器材の殺菌,輸血用血液の照射なども含めればさらに拡がる。この本を読めばすぐにわかるのだが,放射性物質は核医学の検査や治療で体内に投与されれば,法令(医療法)上の規制はなくなる。核医学での治療は別にして極端なことを言えば,核医学の検査後に駅のトイレに行ってもいいことになる。レベルから言えば実際は問題になることはないが,どうしてそうなのか等を理解することもできる。放射線は目に見えず臭いも色もない。被ばくしたかどうかもわからない。自然界にも,生活の場にも多くある放射線とその影響を,正し...
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