医学界新聞

連載

2008.01.14

レジデントのための

栄  養  塾

大村健二(金沢大学医学部附属病院)=塾長加藤章信(盛岡市立病院)大谷順(公立雲南総合病院)岡田晋吾(北美原クリニック)

第6回   過栄養患者の栄養管理

今月の講師= 加藤 章信


前回よりつづく

 BMIが25以上を肥満と判定します。肥満はさまざまな生活習慣病を中心とした合併症を伴う場合が多く,合併症を伴う肥満の状態を「肥満症」と呼びます。肥満症に対しては積極的な治療が必要ですが,栄養療法だけでなく運動療法や合併症に対する治療も必要となります。

【Clinical Pearl】

・満症には栄養療法による減量が必要で,摂取カロリー量としては25kcal/kg/日(標準体重)程度の基礎代謝量に相当する量が目安になる。
・減量中であっても,蛋白質は1g/kg/日(標準体重)程度を意識して摂取する。
・現体重から5-10%減量しただけで,多くの合併症は軽快する。


【練習問題】


 40歳の男性,営業職。早朝覚醒時の疲労感と日中の嗜眠傾向があり,睡眠時無呼吸症候群の疑いにて当院呼吸器内科を紹介され,検査入院となる。入院時の検査成績にて糖尿病,高脂血症ならびに高尿酸血症を指摘される。退院後,食事量を減らすなど食生活改善の努力をしていたが体重減少がみられず,HbA1cも上昇してきたため当院糖尿病代謝内科へ紹介となる。

身体所見:身長169cm,体重113kg,BMI 39.6,標準体重62.8kg

検査所見(入院時):血清総蛋白7.4g/dL,アルブミン4.3g/dL,AST46IU/L,ALT52IU/L,LDH 195IU/L,γ-GTP56IU/L,UA 8.2mg/dL,空腹時血糖205mg/dL,HbA1c9.3%,TC254mg/dL,HDL-C58mg/dL,LDL-C171mg/dL,TG181mg/dL

Q 本症例にはどのような栄養療法が必要でしょうか?
A 基礎代謝量に相当するカロリー制限食投与を原則とします。

 男性であれば1,500kcal/日,女性であれば1,200kcal/日程度の基礎代謝量(25kcal/kg:標準体重/日)に相当する栄養指導を行わないと,減量しにくいのが実際です。ただしこの場合に,蛋白質は標準体重あたり1g/kg/日程度摂取するようにしないと筋肉量が減少して,やせるというよりはやつれた状態となるので注意が必要です。生活スタイルにもよるのですが,夕食はできるだけ夜8時頃までに終えるのが原則で,それ以降は水とかお茶といったカロリーのないものにします。

 空腹を抑える工夫として,食事の前にキャベツやレタスなどの生野菜をあらかじめ多めに摂取すると満腹中枢が満たされて空腹感を抑えることとなり,少ないカロリーの食事でも長期の維持が可能であるという報告もみられます。

 さらに運動療法も有用です。運動そのものでカロリーの消費をはかることは大変ですが,運動の併用で基礎代謝を高めることができます。継続可能な運動が勧められますが,具体的には「歩くこと」が最も容易で実行可能な運動と言えます。1日15-20分程度,会話が可能なくらいの早足で...

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