医学界新聞

2007.09.24

 

災害看護の展望,経験知からの備え


 さる7月29-30日,東京・パレスホテル立川で開かれた第9回日本災害看護学会の話題を紹介する。

DMAT(Disaster Medical Assistance Team)における看護師の役割
 大規模災害現場で迅速に救命治療を行うための専門的訓練を受けた災害派遣医療チーム日本DMATは,本年9月現在で300チーム(約2000名)が訓練を修了。本学会直前に発生した新潟県中越沖地震では30以上のDMATが被災者の救護にあたった。訓練で得た学びを共通言語に“超急性期”の災害現場でもスムーズな協働・チーム間の連携が可能となっている。今回,被災地への安全な到着には不可欠の道路情報などの収集に,DMAT訓練に携わる看護師らの講師ネットワークが役立ったという。先着したDMATに最新の情報を確認しながら現地へ向かうことができた。

 また,災害現場では重症者のケアに意識が向きがちだが,中越沖地震では徒歩で来る傷病者が多く,トリアージタッグ“黄・緑”に対する資器材が不足した。梶山和美氏(北里大救命救急センター)は「発災から出動までの短時間で,いかに被災地の実情に応じた資器材の準備を行うか」という課題を提示。加えて日常の院内における職員教育や,住民・消防などとの地域連携においてDMAT看護職が果たすべき役割について提言を行った。

組織として災害に備えるために
 埼玉県立小児医療センターは,兵庫県立大学が研究開発した小児病棟に関わる看護師を対象としたシミュレーション教材を活用して毎日,申し送り時に各病棟で3分間,災害発生に備えるイメージトレーニングを行っている。予告なしに「どの児を優先する?」「アンビューバッグはどこにある?」などの質問が向けられる。同センター副看護部長の田代弘子氏は,「反復こそ最大の学習である」と日ごろの自主的な取り組みを評価した。

災害看護教育に関する話題から
 看護基礎教育において災害看護教育が開始された。その陰で看護教員からは,この教育計画立案に対するとまどいの声が聞かれている。

 一般公開ワークショップ「地域と共に歩む防災活動」では,日赤武蔵野短大,武蔵野市,市内の企業・住民ボランティアの協働による「地域防災活動委員会」の取り組みが紹介された。同大は防災ボランティアの育成に,地域の看護基礎教育機関として関わる。副次的効果として,一般学生が授業以外の場で災害看護や地域防災を学ぶ機会になったという。

 このほかに会場では,教育計画立案の支援などを目的に設立された「災害看護支援機構」などによるブース展示も行われた。

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