MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2007.08.27
NURSING LIBRARY 書評・新刊案内
田崎 博一,阿保 順子,佐久間 えりか 監訳
《評 者》田中 美恵子(東女医大教授・精神看護学)
現場で働く玄人にも役立つ精神看護の実践書
本書は,精神看護に携わるあらゆる人々に役立つ良書である。つまり,学部生・大学院生から,実践家,教育研究者までという意味である。きわめて実践的な書であるという意味からは,本書が第一にターゲットとする読者層は,臨床・地域を問わず実践家であろう。実践家であれば折に触れ,本書の「第3部ケアプラン」のページをめくり,患者ケアの根拠をそこに求めることであろう。特に,現場では始終お目にかかる難しいケースに出会い,ありきたりの精神看護の本ではその答えが見出せずケアプランに行き詰まった時にこそ,本書のありがたみが身に沁みることであろう。そのくらい,本書は現場の玄人に役立つ実践書なのである。原書でも第6版と版を重ねていることからも,米国においても好評を博している本であることがわかるが,このたびの翻訳は,1990年の翻訳『看護診断に基づく精神科看護ケアプラン』,1997年の翻訳『看護診断に基づく精神看護ケアプラン』に続く,3回目の翻訳であり,1997年の翻訳版の第2版という位置づけになる。17年という長きにわたり,たゆまず翻訳の労を取り続けてきた訳者らの努力にひたすら敬服するばかりであるが,しかし一面では,訳者らをそうした行為に導くだけの魅力が本書にあるとも言えるであろう。
筆者も1990年の翻訳本のときから,折に付け本書に学んできたのであるが,このたびの第2版は1997年の版と比べても,10年の時を経て時代の変化を反映し,より内容の濃いものとなっている。
具体的には,「第2部 基本概念」に,「訪問看護」「ホームレス」「地域での暴力」「危機介入」「多職種からなる治療チーム」などの項目が追加され,地域における多職種連携のもとでの精神看護ケアという,今まさに日本において課題となっていることが論じられている。先に述べた「第3部ケアプラン」では,DSM-IV-TRに基づき診断・分類がなされ,病因・疫学・経過などの情報が盛り込まれている点で,臨床で使いやすいものとなっている。また何よりも,看護診断に基づき,具体的な看護介入の例がその理論的根拠とともに詳細に記載されている点は,初版から一貫して健在であり,本書の最大の強みとなっている。
以上,主に実践家を意識して本書の内容とその魅力を紹介したが,このような本書は,教育者にとっても役立つことは言うまでもない。殊に大学院教育など,より高度で専門的な教育が期待される現場では,格好のテキストとなろう。また本書の基本的信念として繰り返し述べられている「患者を一人の自立した人間として尊重する」姿勢は,本書の隅々にまで行き渡っており,実践家としても教育者としても,そこから学ぶことは測り知れないのである。
吉本 武史 編
小島 通代,中村 俊規,加藤 薫 編集協力
《評 者》廣田 玲子(愛媛県看護協会会長)
現場の事例を具体的に示した時宜を得た“使える”一冊
私たちは社会生活を営む中で,何らかのストレスを感じながら過ごしている。また看護職は,人の生老病死にかかわりながら,責務の重さを刻々感じ,緊張の連続のなかで業務を遂行している。看護職は,これまで患者の健康だけに焦点を当ててケアを提供してきた。その結果,看護職自身の健康についての関心は,あまりもたれることがなかった。健康を害した時,その責任は個人に向けられる傾向にあった。健康を守る立場にある看護職が自身の健康を害していては,他人の健康を守ることはできないであろう。
近年,医療をとりまく環境が大きく変化し,雇用者が職員を保護するために,快適な環境づくりと労働条件の改善に大きな努力が払われている。21世紀になって,医療現場は大きな変革の時代に入り,医療制度改革のなかで,国民と共に協働して安全・安心の医療を進めるという動きの下で,ストレスケアの必要性がますます強調されている。
本書は,医師・看護師・薬剤師・栄養士・理学療法士・作業療法士・検査技師・放射線技師・事務職など医療チームのなかで織り成す人間模様を考えると,すべての職種の人々に役立つ内容となっている。
また,医療従事者だけでなく,誰にでも理解しやすく書かれており,必要な時に参考書として活用できるような構成になっている。
新人から管理者への相談,また管理者からの相談・面談など,具体的に事例を示しながら方策を考える構成になっているので,現場において非常に参考となる。
第4章の「セルフケア・エクササイズでストレスにうまく対応しよう」では,楽しみながらストレス反応を緩和できるように図解されている。また手軽に応用でき,場所を選ばずに実施できるストレス対処法が紹介されている。
付録には,ストレスチェックによる自己診断,看護現場にみるストレス要因のチェックリスト,ケア・コミュニケーションとナーチャリング,ナースのためのストレスケア・サポートなどストレス尺度やストレスのチェックリストが紹介されており,本書の利用価値を高めている。
現場での事例を具体的に示していること,さまざまな段階の職位の人にも活用・実践ができること,医師・看護大学教授,教員からのメッセージなども掲載されているので,学生にも,また医療現場の方々にも活用できる書として一読をお薦めしたい。
A5・頁232 定価2,310円(税5%込)医学書院
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