MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2007.07.02
MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


松田 晋哉 著
《評 者》島本 和明(札幌医大病院長))
経営から質の高い医療までDPCの正しい理解が助ける

『基礎から読み解くDPC』は,DPC制度立ち上げの時から,立案・普及に尽力してきた松田晋哉先生が,専門家・指導者の立場で,わかりやすくDPCとは何か,そしてDPCの応用について書かれていたもので,DPCに関わる医療関係者にとっては必読の書であり,多くの医療関係者に福音をもたらしてくれた名著である。DPCの2006年度改正に対応して今回,第2版が刊行された。対象病院が大学附属病院より拡大され,DPCの持つ意義も,特定機能病院から急性期医療を中心とする一般病院へと広がり,医療界全体の大きなテーマとなりつつある。
変貌する医療の中で,DPCを正しく理解することが,まず病院経営上必須であることは言うまでもない。加えて,松田先生が常に強調されるのは,経営に加えて質の高い医療へのDPCの応用である。所属する医療圏における自らの病院の位置づけや競合する他病院の解析から,自病院に必要とされる要因を導き,将来ビジョンを作るにも有用である。そして,そのような解析をしていくうえで,OLAP(Online Analytical Processing)による蓄積されたデータを多元的に,視覚的に解析する方法も紹介されている。
このように,病院経営から質の高い医療まで,DPC制度の正しい理解が大きな助けとなる。そして,最終的には医療安全まで考慮した自らの病院の将来像を描き,効率的に病院改革を進めるうえで最も重要かつ効率的な手法となるであろう。
DPC制度の理解のために,本書がわかりやすい入門書であると同時に,深い内容に満ち,読者のレベルに合わせてDPCに関する大きな情報を与えてくれる。松田先生には,講演,研修,会議などをとおして常日頃より御指導いただいているが,本書を読んで,さらに松田先生のお考えが鮮明となった。医療制度がDPCを中心に大きく変貌しつつある現在,多くの医療関係者に読んでいただきたい書である。


古川 裕之,土屋 文人 編
《評 者》小茂田 昌代(東京理科大教授・薬学部医療安全学)
薬剤師が積極的に医療安全に取り組むために最適な教材

ひとくちに医療安全といっても幅広い教育が必要である。薬剤師の行う業務は患者の安全確保に貢献するものであることを自覚し,自分自身のミスを起こしやすい傾向を知り,常にミスを減らす努力を行う安全意識の啓発は,薬学教育には不可欠と考える。また世界に衝撃を与えた“To Err is Human”は,人は間違える動物であり,間違えても重大事故にならない取り組みの重要性を提唱した。そのためにはヒヤリ・ハット事例を自発的に報告し,徹底した原因追求により業務改善に活かし,重大事故を防ぐ組織的取り組みが大切である。しかし,とかく個人の責任追及で終わらせてしまいがちな日本人にとっては,受け入れにくい一面があり,ぜひ学生の頭の柔らかいうちから理解しておく必要があると考える。本書はそういった医療安全の基本的概念から始まり,保険薬局,病院薬局における事故防止への具体的な取り組みや,重篤な副作用の回避,感染防止にわたる取り組み,さらに海外における医療安全,行政,製薬企業の取り組みが紹介されている。
一方で薬剤師は医療チームにおける薬の専門職として,薬の事故を防ぐ役割を担っている。医師,看護師とともに患者の薬物療法に参画することにより,医療安全への貢献が期待されていることから,がん化学療法,妊婦・授乳婦および小児,高齢者への薬物療法について,薬剤師の視点から具体的なチームの一員としての役割についてまとめられている。
最後に,患者,医師,看護師の立場や,法曹の立場から薬剤師への期待が寄せられており,非常に充実した内容となっている。学生教育への活用はもちろんのこと,現場の薬剤師にとっても,医療安全に向けた積極的な関わりを後押しする具体的な内容も盛り込まれており,ぜひ一読をお勧めしたい書物である。
2007年には改正医療法,改正薬事法が施行され,医薬品の安全使用における体制整備が強化された。薬の専門職である薬剤師の医療安全への期待はますます高まりつつあり,まさに本書はその期待に応えるべくして発刊された絶好の教材である。


吉良 健司 編
《評 者》後藤 裕美(新誠会在宅総合ケアセンター元浅草・たいとう診療所)
「その人らしく」いい顔をして過ごしていただくために

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