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薬学生のための医薬品安全管理入門

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インシデント、ヒヤリ・ハット、外観類似と名称類似、注射・点滴、5つのR、情報伝達エラー…。本書は医薬品安全管理の理論から現場で活躍している薬剤師による実践論まで、幅広い内容をカバーした。医薬品に関わる医療事故の防止に向けて「行動する薬剤師」になるための全16章。
編集 古川 裕之 / 土屋 文人
発行 2007年03月判型:B5頁:248
ISBN 978-4-260-00405-3
定価 3,740円 (本体3,400円+税)
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はじめに
執筆者/土屋文人

 米国におけるIOMの報告「To Err is Human」は世界に大きな衝撃をもって受け入れられたが,時を同じくしてわが国において大学病院における患者取り違え手術事故が発生したことから2000年以降,医療安全についての社会的な関心が急速に高まり,薬学部の「実務実習モデル・コアカリキュラム」でも「医療安全」が取り上げられるようになった.医薬品関連医療事故やヒヤリ・ハット事例の発生を防止するために,従来医薬品に求められてきた「物の安全」に加えて「使用の安全」についてのシステム構築が行政,業界,医療機関に求められることとなり,2007(平成19)年4月からは医療法が改正され「医薬品の安全管理」の責任者の設置や安全管理手順書の装備が医療機関等に義務づけられることになった.しかしながら「医薬品の安全管理」を本当に根付かせるためには,医療現場のみならず,学生時代からの教育が極めて重要であるが,残念ながら総合的にまとめられた学生向けテキストはこれまで存在していなかった.このことが今回,本書を上梓する大きな動機になっている.
 本書の構成は大きく3つに分けられる.第1章から第3章では総論として,安全管理における薬剤師の役割,安全管理の理論,薬剤師が陥りがちなヒューマンエラーについて解説している.第4章から第13章では,安全管理の取り組みに関する実践的な内容をまとめた.第14章から第16章では,社会的な視座から安全管理について論じている.
 2007(平成19)年の医療法改正により薬局が医療提供施設と明記されたこと,あるいは薬事法の改正により一般用医薬品についての販売制度が変更されることなど,薬剤師,医薬品についての環境変化にはめまぐるしいものがある.医薬品を本当に医薬品として使用することができるよう,医薬品安全管理に関する教育は可能な限り早い時期から始めることが望ましい.本書が医薬品安全管理に関する薬学生の認識を高め,薬剤師として社会に出た後で患者安全に向けた積極的な行動を起こすきっかけになることを,強く願っている.
 お忙しい中,ご執筆を快く引き受けてくださった各先生方に心より感謝申し上げたい.

 2007年 2月

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第1章 医薬品安全管理を考えるために必要な視点
第2章 薬剤師のための医療安全管理概論
第3章 薬剤師とヒューマンエラー
第4章 保険薬局における医薬品安全管理
第5章 病院薬局における医薬品安全管理
第6章 病院薬局における医薬品供給体制
第7章 重篤な副作用の回避(プレアボイド)
第8章 がん化学療法
第9章 妊婦・授乳婦および小児への薬物療法
第10章 高齢者への薬物療法
第11章 感染管理
第12章 研究的治療
第13章 海外における医療安全の取り組み
第14章 行政の取り組み
第15章 製薬企業の取り組み
第16章 薬剤師への要望と期待
付録
 1. Medication Errorの実例ファイル
 2. 医療安全推進総合対策-医療事故を未然に防止するために
 3. 今後の医療安全対策について-報告書
 4. 関連通知
索引

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薬剤師が積極的に医療安全へ取り組むために最適な教材
書評者: 小茂田 昌代 (東京理科大教授・薬学部医療安全学研究室)
 2000年以降,医療事故が次々と報道され,社会の医療安全についての関心が急速に高まった。航空業界など人の命に関わる他業界においては,すでに積極的な従業員への安全教育が行われてきたのに比べ,医療界の安全教育は社会の要求に応えるべく動き始めたばかりである。薬剤師の安全教育も2005年に薬学部6年制がスタートをしたのを契機に,薬学教育の充実が図られることとなり,「モデル・コアカリキュラム」に医療安全が組み入れられた。

 ひとくちに医療安全といっても幅広い教育が必要である。薬剤師の行う業務は患者の安全確保に貢献するものであることを自覚し,自分自身のミスを起こしやすい傾向を知り,常にミスを減らす努力を行う安全意識の啓発は,薬学教育には不可欠と考える。また世界に衝撃を与えた“To Err is Human”は,人は間違える動物であり,間違えても重大事故にならない取り組みの重要性を提唱した。そのためにはヒヤリ・ハット事例を自発的に報告し,徹底した原因追求により業務改善に活かし,重大事故を防ぐ組織的取り組みが大切である。しかし,とかく個人の責任追及で終わらせてしまいがちな日本人にとっては,受け入れにくい一面があり,ぜひ学生の頭の柔らかいうちから理解しておく必要があると考える。本書はそういった医療安全の基本的概念から始まり,保険薬局,病院薬局における事故防止への具体的な取り組みや,重篤な副作用の回避,感染防止にわたる取り組み,さらに海外における医療安全,行政,製薬企業の取り組みが紹介されている。

 一方で薬剤師は医療チームにおける薬の専門職として,薬の事故を防ぐ役割を担っている。医師,看護師とともに患者の薬物療法に参画することにより,医療安全への貢献が期待されていることから,がん化学療法,妊婦・授乳婦および小児,高齢者への薬物療法について,薬剤師の視点から具体的なチームの一員としての役割についてまとめられている。

 最後に,患者,医師,看護師の立場や,法曹の立場から薬剤師への期待が寄せられており,非常に充実した内容となっている。学生教育への活用はもちろんのこと,現場の薬剤師にとっても,医療安全に向けた積極的な関わりを後押しする具体的な内容も盛り込まれており,ぜひ一読をお勧めしたい書物である。
 2007年には改正医療法,改正薬事法が施行され,医薬品の安全使用における体制整備が強化された。薬の専門職である薬剤師の医療安全への期待はますます高まりつつあり,まさに本書はその期待に応えるべくして発刊された絶好の教材である。

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